• About(開催にあたって)
  • Program(プログラム)
  • Schedule(スケジュール)
  • Fringe(フリンジ)
  • Event(関連イベント)
  • Feature(特集)
  • Ticket(チケット)
  • Access(会場アクセス)

Feature(特集)

photo by Akane Yamakita

高嶺格
『ジャパン・シンドローム~step1 球の裏側』
展覧会+パフォーマンス・レポート

KYOTO EXPERIMENTは、今年から3年計画でブラジルと日本とのアーティスト交流プロジェクトを始動しました。日本側のアーティストとして送り出されたのは、これまでご自身の体験や社会に対する疑問/違和感をもとにして、インスタレーションや映像、パフォーマンス作品などを手がけてきた高嶺格さん。1年目の今夏、ご家族とともに1カ月ブラジルに滞在しました。この滞在をもとに制作したインスタレーションが、現在京都芸術センターのギャラリーで展示されています。10月16日まで。

ギャラリー南の扉を開けると、薄暗いながらも何だか艶めかしくてギラギラした空間に入ります。流れているのはブラジルのファベーラ(スラム)発祥の「Baile Funk」という音楽で、壁際に大きなブラジル国旗がなびいていました。ブラウン管テレビが2方向に7台ずつ、中央に大きなスクリーンが設置されていて、そこには高嶺さんがこの夏、ブラジルのリオ=デジャネイロに滞在したときの映像や写真が投影されています。奥さんと娘さんの写真や、現地の方々にビデオカメラを渡して自由に撮影してもらった街や車の風景などがランダムに映し出されていました。
スクリーンの前に足型が貼られているので、国旗を背にするようにしてその上に立ち、自由に手を振りかざしてみたり、跳びはねてみたりして下さい。すると、壁に仕組まれたセンサーがあなたの動きを感知して、映像と音が変化してゆきます。誰もいなければ、ちょっと踊ってみてもいいかもしれません。原色の空間で、めまぐるしく変化する照明、派手な音楽。思わず陶酔してしまうような、どこか旅の途中の飛行機に乗っているような気持ちになります。

ギャラリー南 展示風景 photo by Akane Yamakita

ギャラリー南階段付近で流れている映像作品は《ジャパン・シンドローム~関西編》。高嶺さんが帰国してから開始されたプロジェクトによるものです。少し見つけにくいかもしれませんが、座る場所もきちんと設置されているので、こっそりと覗く感じで立ち寄ってみて下さい。
そのプロジェクトとは、2011年9月上旬に、出演者の3人(伊藤あやりさん、児玉悟之さん、トミー〈chikin〉さん)が関西各地のお店や施設を訪れて、その先々で、ある質問をそれとなく投げかけてみるというものです。
「……これって、放射能の影響とか、大丈夫ですかねえ?」
彼らがリサーチを行った場所は、スーパー、青果店、洋菓子店、水族館、コンビニなど31カ所にのぼります。各地で得られた反応を文字に起こして、13シーンを忠実に再現し、映像作品として発表しました。
会期初日の9月23日(金・祝)には、京都芸術センター・フリースペースで、同作品のライブ・パフォーマンスが行われました。

ライブ・パフォーマンス《ジャパン・シンドローム~関西編》 photo by Akane Yamakita

103人もの方にご来場いただきました。

上演後には、高嶺さんを交えてのトークがありました。取材中、3人は相手にどのように話を持ちかけたのか、どういうところが辛かったのか、などのエピソードなどを話されました。
「大丈夫ですよ」「安全です」という店側のマニュアルに沿った対応の中に、ところどころその人個人の本音が見え隠れする、そこの隙間を探りながらつつき出して、少しずつ侵入してゆく。自分は今どこに立っているのか(それは単純に場所というだけではなくて、世間における立場というものだったりします)ということを改めて認識しました。だって、いつも自分が「こっち側」にいるとは限らないから。

ポスト・パフォーマンス・トーク photo by Akane Yamakita

さて、運動場を挟んで向こう側のギャラリー北には、何やら日本の歌謡曲が流れています。1970年代以降の青春っぽい音楽。モニターに丸く切り取られたその映像は、ピントが合わず、ぼやけていて、古いモノクロ写真を見ているような気持ち。ゆらゆらと人間のかたちが映し出されています。来場者の中に、「懐かしい気分になる」という声があったのは、歌謡曲が流れているせいだけではないはず。こちらはまさに「球の裏側」というわけです。

ギャラリー北 展示風景 photo by Akane Yamakita

ギャラリー北 展示風景 photo by Akane Yamakita

高嶺さんがブラジルに滞在して、現地で見てきたものとは。また、地球を突き抜けて、裏側まで浸透してしまうものとは何なのでしょうか。わたしは何だか身体が浮かび上がって、地核に吸い込まれてしまいそうな気持ちになりました。はたしてわたしたちは今、世界の何と向き合ってどこに立ち尽くしているのか。
ぜひ、その姿を目撃しに来て下さい。

高嶺格/たかみね ただす

1968年生まれ。滋賀県在住。京都市立芸術大学漆工科卒業、その後岐阜県立国際情報科学アカデミー(IAMAS)に学ぶ。国/ジェンダー/言語など、社会を構成するものの矛盾や不和を、自らの個人的経験を通した表現で明らかにしようとする。作品は実に多様な形態をとる。現在、最新の個展「高嶺格:とおくてよくみえない」が鹿児島・霧島アートの森で開催中(2011年/横浜美術館、広島市現代美術館他に巡回)。そのほかの展覧会に、「高嶺格:Good House, Nice Body~いい家、よい体」(2010年/金沢21世紀美術館)。舞台演出作品に『Melody♥Cup』(2009年)、『リバーシブルだよ、人生は。』(2007年)などがある。www.takaminet.com


高嶺格『ジャパン・シンドローム 〜step1 球の裏側』展覧会情報ページへ

高嶺格 著書・展覧会カタログ販売中!


テキスト:山脇益美(KYOTO EXPERIMENTインターン)