KYOTO EXPERIMENT 2014|京都国際舞台芸術祭

2013年9月27日-10月19日

Feature(特集)

  • Report

総覧 高嶺格「ジャパン・シンドローム」シリーズ

2011年からKYOTO EXPERIMENTに継続して参加し、「ジャパン・シンドローム」シリーズを発表してきた高嶺格。 アメリカ映画の「チャイナ・シンドローム」に想を得て名付けられた本作のタイトルは、福島の原発事故以降、今後も長い将来に渡って社会の根幹に大きなダメージを与え続けることが確実な放射能の問題に揺れる日本の状況を言い表しています。

この複雑な放射能の問題に芸術がどう関わるか?という問いに対し、「ジャパン・シンドローム」は、政治状況や街の空気の変化を柔軟に反映しつつ、様々な表現スタイルをとりながら3年にわたり発展してきました。 本年のKYOTO EXPERIMENT 2014における同シリーズ最終章となる新作の初演を前に、これまでの「ジャパン・シンドローム」シリーズを振り返ります。

『ジャパン・シンドローム〜 step1. “ 球の裏側 ”』
[展覧会]2011年9月23日–10月16日 京都芸術センター
[パフォーマンス]『ジャパン・シンドローム〜関西編』 2011年9月23日 京都芸術センター

京都芸術センターの南ギャラリーに展示されたのは、リオデジャネイロで撮影された映像の数々。インタラクティブなシステムを用い、観客の動きに反応して映像と照明が様々に変化する。会場にはファヴェーラ(ブラジルのスラム)発祥のダンスミュージックが大音量で鳴り響く。ここでは、ディスコのように派手な空間の中、観客は「作品を鑑賞する」ために「動く(=ダンスする)」ことを強要される。一方の北ギャラリーでは、南ギャラリーの観客の様子がライブ中継された映像がプロジェクションされている。観客はそのことを知らされていないので、さっきまで踊っていた自分がこの部屋で見られていたことに動揺する。

そしてこの部屋では、北ギャラリーのダンスミュージックとは打って変わり、日本の昭和歌謡曲(懐メロ)が小さく鳴っている。「日本から見たブラジル」と「ブラジルから見た日本」、双方が観客の身体を介して裏返しの状態で提示されるインスタレーションとなった。


※当初、このプロジェクトは KYOTO EXPERIMENT とブラジルのパノラマ・フェスティバルのエクスチェンジプログラムとしてスタートした。高嶺は 2011年8月、家族と共にリオデジャネイロに一ヶ月滞在。作品で使われた画像は、高嶺一家が現地で撮影した写真と、現地の人にカメラを預けて撮ってもらったホームビデオである。

feature_takamine_step1

左:南ギャラリー、右:北ギャラリーでの展示風景 photo: Takuya Oshima

また同時に、別作品として『ジャパン・シンドローム~関西編』が制作された。これはパフォーマーがスーパーや水族館などを訪れ、客としてさりげなく放射能の影響について店員に質問した様子を、舞台上で再現した映像作品である。

この作品は後に、「山口編」(山口情報芸術センター [YCAM])、「水戸編」(水戸芸術館現代美術センター)としてシリーズ化され、現在までに、日本に加えオランダ・ドイツ・イギリス・アメリカ・韓国・トルコで発表されている。

『ジャパン・シンドローム~関西編』
2011年9月23日–10月16日
京都芸術センター

feature_takamine_kansai10

『ジャパン・シンドローム~山口編』
2012年6月23日–7月1日
山口情報芸術センター[YCAM]

takamine_fe_05

『ジャパン・シンドローム〜水戸編』
2012年12月22日−2013年2月17日
水戸芸術館現代美術ギャラリー「高嶺格のクールジャパン」

takamine_fe_06

『ジャパン・シンドローム〜step2. “球の内側”』
[パフォーマンス]
2012年10月19–21日 京都芸術センター
2012年11月13–14日 TEATRO JOÃO CAETANO[パノラマ・フェスティバル(リオデジャネイロ)]

「地球内部への旅」をモチーフとしたこの作品は、リオでの高嶺によるプレゼンテーションと面接を経て選ばれたブラジル人2名と日本人1名をパフォーマーとして起用、京都での一ヶ月の滞在を経て作られた。舞台は、巨大なブルーシートをドーム状に膨らませたテントの「内側」。視界全体を青く覆うこの舞台装置は、生きもののように、しぼんだり波打ったり分断されたりと有機的に形状を変え、時に観客のいる場をも脅かされる。

ダイナミックな舞台美術に加え、3つの個性的な身体、2つの言語、地響きのよう轟音、強烈な色彩的コントラストなどの要素で構成された本作品は、地球という大きなスケール感を伴いながら自分の内面を見つめ直すような特殊な時間となった。

takamine_fe_04

photo: Ayako Abe

本作品は同年11月に、20年以上の歴史を持つリオデジャネイロのダンスフェスティバル「パノラマ・フェスティバル」にて再演された。日本とブラジル、両国の社会状況などについても話し合いながら創り上げてきた本作がリオの観客にどのように受け入れられるのか。

会場は、200年以上の歴史を持つという大劇場。その舞台上舞台に設置された舞台美術、ブルーシートを膨らませた「球」の内側で、日本での上演と同じように車座になって作品を鑑賞した観客からは「大変強いインパクトを受けた」という感想が多く聞かれるなど、大きな反響を得た。

feature_takamine_step2

photo: Ayako Abe

『ジャパン・シンドローム〜ベルリン編』
[展覧会]2013年9月28日–10月27日 京都芸術センター
[パブリックビューイング(映像+パフォーマンス)]2013年10月5日 京都市役所前広場

2013年、高嶺は一年間のレジデンスでベルリンに滞在した。当初『ベルリン編』は、関西・山口・水戸編と同じフォーマットの映像作品として、ベルリンで制作される予定になっていた。しかし日本では自民党が復権し、原発を巡る論議は「賛成」あるいは「反対」へと二極化した対立構造へと急激に変化しつつあった。こうした状況を鑑み、ベルリン編は「作品」という形ではなく「アクション」として、パブリックな場所でのパフォーマンスと形を変えた。

京都市役所前の広場で激しく踊るダンサー2人。その映像はリアルタイムに加工され、京都市役所の壁面にプロジェクションされる。ディスコ音楽が大音量で響き渡るなか、集まった1000人ほどの人々は序々に一緒に踊り出し、まるで野外レイブパーティのような場が出現した。

takamine_fe_07

photo: Tetsuya Hayashiguchi

映像はインターネットでライブ中継され、映像の上に投影された問いかけ――「最近の日本のニュースで心に残っていることは?」「踊るの好きですか?」「日本に来たいと思いますか?」など――に対し、twitterで応答する不特定多数の声もロールで流れていく。

熱狂の最中、音楽は止み、最後に高嶺の「ドイツよ、ありがとう」で始まるメッセージが流れ、その場にいた全員がそれを静かに凝視するというエンディングになった。ギャラリーではこれまでの「関西編・山口編・水戸編」の3つの映像と、市役所前での「ベルリン編」の記録映像が展示された。

takamine_fe_08

photo: Tetsuya Hayashiguchi

PageTop