KYOTO EXPERIMENT 2016 AUTUMN|京都国際舞台芸術祭

2016年10月22日-11月13日

Feature(特集)

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『ソフトドランク』 松根充和  撮影:オカザキエルサ

  • INTERVIEW

インタビュー 松根充和(『踊れ、入国したければ!』企画・製作、パフォーマンス)

ウィーンを拠点に活躍し、自分の身体を使って社会や制度を撃つようなパフォーマンス作品を発表している松根充和。国籍や民族の境界線を問い返す新作『踊れ、入国したければ!』の日本初演にあわせ、

これまであまり日本では紹介されてこなかったその活動についてお聞きしました。なお自身が企画する展覧会「世界の向こう側へ」も同会場内で同時開催されます。

── ウィーンに拠点を移すきっかけや、これまでの活動、作品について教えていただけますか。

1997年の夏に、ウィーンのインパルス・ダンスフェスティバルを訪れました。ダンスの学校に数年通った後で、ウィーンの振付家の人たちと知り合いになったりして、なりゆきでウィーンに住み始めました。しばらく、コンテンポラリーダンスの分野で活動していたのですが、この頃に、コンタクト・インプロヴィゼーションやインスタント・コリオグラフィーの手法を学びました。自由な感じで、当初はすごく刺激的でした。でも6~7年やっていると、実はコンテンポラリーダンスの製作の仕方にも既存の型みたいなのがあって、それにすごく縛られている気がして、嫌になってしまいました。

グループで活動するのにも疲れた感じで、2004年頃から自分の作品をつくり始めました。
その時にまずつくった作品では、茹でたじゃがいもを観客に見てもらってから、僕がそれを食べる。目の前から無くなるけど、実はまだ同じ空間内にじゃがいもは存在している。僕のお腹の中ですけど。それで、僕が踊れば、じゃがいもが空間内で踊ってることになるんじゃないか、って考えんたんです。このシーン、「じゃがいもダンス」って呼んでました。

この作品は、ウィーンのダンサーでビジュアル・アーティストのダヴィット・スバルと共作でつくって、彼とはその後数年間一緒に活動しました。街の空き店舗を使って、お客さんにパフォーマンスを直接買ってもらうお店のプロジェクト『ストア』や、いろいろな国の首都の観光名所で観光写真のように60分間突っ立つ『ワン・アワー・スタンディング・フォー』などに取り組みました。観光名所のプロジェクトは、一見すると、僕たちが世界の名所の前で撮った観光写真のようなんだけど、その様子はビデオで撮影されています。

僕たちが静止しようとする姿と、周りを歩いている他の観光客などの動きが対比されて写っています。全く動かないというのは、かなり苦痛で、現実には不可能です。手足が痺れて、震えてきたりしますからね。でも、静止しようとする試みによって、逆に観光をめぐる世界の動きみたいなものが見えました。

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『ワン・アワー・スタンディング・フォー』松根充和 + ダヴィット・スバル

── パフォーマンス作品『踊れ、入国したければ!』は、どのような経緯で製作されることになったのですか?

2008年にたまたま新聞で読んだ記事が発端になっています。空港の入国審査で踊らされたダンサーについての小さな記事でした。新聞なので、「事件」のように書かれていたけれど、なにか「笑い話」のようでもあった。深刻さと滑稽さが入りまじった話で、とても興味を惹かれたんです。そのダンサーは、審査官の前で具体的にどのように踊ったのだろうかということを知りたいんだけど、それはどこにも書かれていなかった。だから、いろいろ想像してみました。その時は、その話をエッセイにまとめまて、ブックレットを自費出版しました。

それとは別に、2005年頃から2010年頃まで、いろいろな国の空港で撮りためていた映像がありました。それから数年を経て、2014年に新しいパスポートを申請する必要があった時、ちょっと変わったセルフポートレートの写真を証明写真として提出しました。自分なんだけど、どこか自分でないようにも見える写真でした。そして2014年末、自分のホームページをリニューアルするために、ここ数年のプロジェクトを整理していた時に、これらの要素を組み合わせたらパフォーマンス作品になるな、と気付いたんです。突然、パズルの断片が綺麗に並んで、ひとつの絵が見えたような感じでした。このパフォーマンスの主題でもある「現実と虚構の狭間で揺れるアイデンティティー」や「グローバル社会の亀裂」については常に興味を持ってきました。

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『客観的なものの見方』松根充和 + マクシム・イリューヒン

── 松根さんご自身のパフォーマンスと企画したグループ展を同時に見せるという場は、どのように考えられたのでしょうか。

まず、僕が個人的に取組んでいるプロジェクトのテーマを、他の作家たちはどのように扱っているのだろう、ということに興味があります。プロジェクトを進めていく段階でのリサーチの一環みたいなものですが、そのうちの数人の作家に声をかけて、展覧会にした形です。僕ひとりだけの作品を見るよりも、数人の作家の作品を通して見た方が、視野も広がり、テーマについてもより深く考えられるように感じます。

あと、前述の僕のパスポートの証明写真は、榎忠さんの1970年代のハプニングへのオマージュでした。榎忠さんには、そのハプニングの記録写真で展覧会に参加してもらっています。なので、グループ展の企画自体が、僕自身のとても個人的な視点や関係から始まったものです。それと、僕は舞台上では一人なので、同じ会場内に他の作家の作品があるのは心強い。(笑)

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『ソフトドランク』松根充和 撮影:オカザキエルサ

── 今回の作品を日本のオーディエンスに向けて初めて上演するにあたり、メッセージがありましたらお願いします。

今回のパフォーマンスでは、自分自身のアイデンティティについて考えることがテーマになっています。 イスラム系の名前を持っているがゆえに空港で踊らされたアフリカ系アメリカ人ダンサーについて考えることが、自分のアイデンティティを見直すことにつながるとは、ある意味で驚きでした。日本で子供時代を過ごしたことは、僕の人格形成に深い影響を与えました。自分がヨーロッパに住んでいる外国人であることや、今でも日本のパスポートを所有する日本人であることも、作品内の重要な要素になっています。

子供の頃に神戸の海岸で、海に浮かぶ船を見て、どこか遠くに行くのを夢見たことなども。この作品を日本で公演できることは、とても感慨深いです。
オリジナルは英語で作ったんですが、今回京都での上演にあたり、日本語バージョンをつくり直しました。これは、とてもいいチャレンジになりました。それと、アプローチは以前と全く違うんですが、このパフォーマンスでは、10年くらい遠ざかろうとしていた、踊るという行為にもう一度取り組むきっかけになりました。僕なりの真剣な踊りとは何なのか。まあ、成果は舞台で観てください。(笑)

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