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ピチェ・クランチェン/ピチェ・クランチェン ダンスカンパニー
『About Khon』

タイ伝統舞踊の名手は問う。「現代において、どのようにして伝統芸術の誇りを取り戻すのか?」


タイの伝統舞踊「コーン(Khon)」の精神と現代の感性とをつなぐ架け橋として活動し、伝統芸術の叡智を守り続ける、ピチェ・クランチェン。フランスの振付家ジェローム・ベルと創作した『ピチェ・クランチェンと私』(2005年)は、フランスとタイにおける演劇と振付の伝統について、疑問を提起した。つづく『I am a Demon』(2006年)では、「コーン」における悪魔のキャラクターの仕組みと、ムーブメントの背後にある知性への探究を行った。既に日本でも上演された、これらの作品から生じた探究が、『About Khon』へと織り込まれ、さまざまな障害を乗り越えながら、議論を発展させることになる。今回の日本上演では、京都の振付家・山下残が、クランチェンの対話者として舞台に登場する。二人が繰り広げるアクチュアルな対話は、伝統と現代、それぞれのつながり、葛藤、そして断絶について、新たなヴィジョンを与えるだろう。

団体名

ピチェ・クランチェン ダンスカンパニー(バンコク)
http://www.pklifework.com/

タイトル

『About Khon』

会場

京都芸術劇場 studio21

日時

11/12(Fri)19:00
11/13(Sat) 14:00★
11/14(Sun) 16:00

ポストトーク

★11/13(Sat)

上演時間

90min

料金・チケット

一般/前売 3,500円
一般/当日 4,000円
ユース・学生/前売・当日3,000円
高校生以下/前売・当日 1,000円

スタッフ

振付: ピチェ・クランチェン/コンセプト:ジェローム・ベル

出演

ピチェ・クランチェン、ノッパドン・ブンデット、ウォンコット・ウッティデージ、マニット・ティーッパティマポーン、ジラーユッド・ピアドプット、パーラミット・マニラット、
(対話者)山下残

制作:ソジラット・シンゴンガー/助成:エスプラネード(シンガポール)、ゲーテ・インスティトゥート(タイ)/主催:KYOTO EXPERIMENT

関連イベント

11/10(Wed)
フェスティバル・ワークショップ
ピチェ・クランチェンによるタイの伝統仮面舞踊“Khon”ワークショップ

演出家ノート

観客の皆様
この公演を、どうか全神経を集中してご覧ください。終演後に、「このコーンの公演と、かつて皆様がご覧になったことのあるその他のコーンの公演とは、何が違うのか」について、私に、そして皆様ご自身にもお話しください。
「About Khon」は、「ピチェ・クランチェンと私」と「I am a demon」の公演の続きです。この作品は、衣装やメイクといった要素ではなく、物語の現実主義的要素、そしてダンサーの質に主な焦点を当てており、「質の高いコーン公演」を再びタイの社会にもたらすという、私の人生における重要な使命の一部となっています。
このプロジェクトのために、私は、数えきれないほど多くのタイの組織から、サポートを得ようと努力しましたが、成果はありませんでした。このように、今日この公演が高く評価されることを可能にしてくださったエスプラネード(シンガポール)、そしてタイのゲーテ・インスティトゥートのサポートに感謝いたします。

私たちは、私たちのありのままの姿を信じていません
私たちは、私たちの持てるものを見ていません
私たちは、善き行いについて、感謝されることを期待します
私たちは、偉大であることに憧れ、奴隷のように働きます
私たちは、私たちの文化が失われると、タイ人ではないのです

ピチェ・クランチェン(一部抜粋)
[劇評] 伝統のマスクをはがす
タイ人ダンサーとフランス人舞台芸術家が「コーン」の神秘を解き明かす


「コーン」
タイの伝統舞踊家で振付家でもあるピチェ・クランチェンとフランスの舞台芸術アーティストであるジェローム・ベルは、それぞれの国において“恐るべき子供” と呼ばれてきた。彼らの初のコラボレーションにして実に知的なパフォーマンス「ピチェ・クランチェンと私」は、作品を見にアジアおよびヨーロッパ各地から押し寄せた多くの観客を魅了した。
彼らの2回目となるコラボレーション「about Khon」は、前作とピチェのソロ作品である「I Am a Demon」が発展し制作された作品。同作品のワースドプレミアが、「da:ns 2007」フェスティバル(シンガポール)の「シフト」(ダンスの既成概念に挑戦する作品を紹介するの部)の演目として去る金曜日に上演された。
「about Khon」は、その存在が見過ごされてしまいがちなタイの古典舞踊の今日的な意味浮き彫りにした。
約150席を収容する半円形の中規模シアターであるEsplanade Recital Studioは、全ての観客から舞台がしっかりみえる、本作品にぴったりの会場であった。
開演予定の午後9時30分を前にして、舞台上には延長コードにつながれたiBook以外は何も見当たらない。
そこに共にカジュアルな格好に身を包んだピチェ(35歳)とベル(43歳)が登場する。殺風景な黒幕を背に、ピチェが上手に腰をおろす。ジェロームはiBookの前に座り、今にもスクリーンに映し出されたインタビューの質問を読み上げるかの様なたたずまいである。
予想に反せず、「文化観光者」または「アートライター」とでもいった所のフランス人は、タイ人アーティストに対して「あなたの名前はなんですか?」、「あなたの職業を教えて下さい」に始まるいくつもの質問を投げかける。
やがてインタビューは 、「コーン」が昨今は主にレストランやホテルで観光客に向けて上演されていて、タイの人びとは中等学校でラーマキエンについて学び、多くの人が同物語を知っているにも関わらず、自文化の伝統舞踊であるマスクダンスの芸術性を理解していない事を露呈する。
観客はその後、長い伝統の中で「コーン」の登場人物がステージの上では死んだ事がない事を知る。
「彼は二度と姿を表す事がない。その事によって観客は彼が死んだ事を知る」と、ピチェは死を表現するにあたっての演劇的技法を説明しつつ、「コーン」は見る者が自らの想像力を働かせて鑑賞するものである事を語る。 ピチェはしばしば立ち上がり、実際の動きをデモンストレーションしてみせる。ある時には、コーンに登場する男性、女性、悪魔と猿の4つのキャラクターの一連の動きをベルの前で演じてみせる。
始めは、どこで次のキャラクターの動きに変わるのか判りにくい。その後、ピチェが動きを4つのパートをに分けて演じる事で、ベルおよび観客は各キャラクターの微妙な違いを認識する事ができる。興味深いのは、見る者がコーンの表面的な美しさだけでなく、そこに内在する複雑なディテイルに目を向け始める事である。同様の行為は、私たちの日々の行いや出会う人びとに対しても当てはめる事ができる。
「About Khon」で繰り広げられるトピックや対話は真面目で洞察力に富んだものであるが、ユーモアも忘れていない。例えば、ピチェがラーマキエンには多くの戦争の物語が登場し、多数のメインキャラクターが命を落とす事、そしてそれらを全て再演しようと思ったら1週間かかると付け加えると、笑いが会場をつつんだ。
ピチェとベルは、完璧なアクトをやってのけた。ベルは「ピチェ・クランチェンと私」の公演においても、同様のやりとりを何度も繰り返してきたにも関わらず、ピチェの口から発せられる回答を初めて聞いたかの様に耳を傾けていた。
ピチェはというと、お世辞にも流暢とは言えない英語でセリフを言う事が、彼の返答がとても誠実なものの様にひびいていた。
公演の最後20分には、Life Work Companyのダンサーらによって録音源を使った実際のコーンの戦闘シーンが上演される。しかし、それまで50分に渡ってベルとピチェのやりとりによって築き上げられてきた観客の期待と興奮を前にして、何がしかの物足りなさを感じざるを得ない。
トッサカンの死を哀悼するかの様に正体不明の女性キャラクターが意図的にゆっくりと舞台の後方に歩いていく様子でしめくくられる同作品は、世界の演劇ファンに向けたコーンの再生を意味している。
2日後にMR Kukrit Pramoj's Heritage House で上演されたバンコクプレミアでは、シンガポール公演では趣向を凝らしたコーンの伝統的衣装とマスクに見をつつんでいたLife Work Companyのダンサー達が、Tシャツとだぶだぶのタイパンツで演じるという変更がすでに加えられていた。この事は、バンコクの聴衆がピチェとベルが論じるコーンの真髄であるダンサー達の動きをより享受する事を可能にした。
「過ぎたるは及ばざるがごとし(Less is more)」は、コンテンポラリーダンスにおいて繰り返し引用されるフレーズだが、「About Khon」はこの名言を体現しているだけでなく、様式化されたタイの伝統舞踊のマスクをはずし、その神秘を解き放つ。
作品の詳細はウェブサイトを参照:Pklifework.com.

パウィット・マハサリナンド 『The Nation』2007年10月25日掲載
http://www.nationmultimedia.com/2007/10/25/lifestyle/lifestyle_30053629.php

ピチェ・クランチェン

プロフィール

16歳より、チャイヨット・クンマネーに師事。タイの古典仮面舞踊劇(コーン)の訓練をはじめる。タイ古典舞踊を学び学士号を取得した後、ダンサーおよび振付家として活動を開始。1998年にバンコクで開催されたアジア競技大会の開会式や閉会式で演出を務める。2001年、アジアン・カルチュラル・カウンシルのプログラムで、アメリカで7 ヶ月間のレジデンスを行う。2005年、ブリュッセルのクンステンフェスティバルデザールにて、タイのアーティストを代表し、3つのダンス作品を発表。その活動はアジアのみならず、ヨーロッパ、中東、北アメリカ各地に広がる。2008年、ヨーロッパ文化財団より「Princess Margriet Award for Cultural Diversity」を授与される。2009年、京都造形芸術大学主催、第3回世界アーティストサミット京都に参加。

公演歴

2003
ソロダンス作品『I-TAP-PAJ-JA-YA-TA』( 演出:ピチェ・クランチェン)
各国のダンス・フェスティバル/ アジア、ヨーロッパ

2004
ソロダンス作品『The Bathe Ceremony of Phaya Chattan』( 演出:ピチェ・クランチェン)
各国のダンス・フェスティバル/ デンマーク、日本

2005
ジェローム・ベルとのダンス—対話パフォーマンス『Made in Thailand』、ソロダンス作品『Shoes』、グループ・パフォーマンス『The Sacrifice of Phya Chattan』( すべて演出:ピチェ・クランチェン)
クンステン・フェスティバル・デザール2005/ ブリュッセル

2005-2009
ジェローム・ベルとのダンス—対話パフォーマンス
『ピチェ・クランチェンと私』( 演出:ピチェ・クランチェン)
各国のダンス・フェスティバル/ アジア、ヨーロッパ、中東、北アメリカ、オセアニア 他

2006-2009
タイ宮廷舞踊スタイルのソロ・ダンス・パフォーマンス『I am a demon』( 演出:ピチェ・クランチェン)
各国のダンス・フェスティバル/ アジア、ヨーロッパ、中東、北アメリカ

2007-2009
グループ・ダンス作品『About Khon』(演出:ピチェ・クランチェン)
シンガポール、香港、オーストリア

2010
『Nijinsky Siam』(演出:ピチェ・クランチェン)