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京都国際舞台芸術祭 2017

FEATURES:Interview

村川拓也インタビュー

約2ヶ月間兵庫県豊岡市の城崎国際アートセンターにて今回の新作『インディペンデント リビング』の滞在制作を行った村川拓也。初演を控えて稽古も佳境に入った頃、新作について語りました。
*豊岡のコミュニティラジオ、FMジャングル「Art News Toyooka」(10月12日放送)出演時のインタビューより抜粋

——今回の新作は、日本と中国と韓国をテーマにした作品ということですが。

村川拓也 日本・中国・韓国から1人ずつの出演者と城崎国際アートセンターに滞在して稽古をしました。もともと僕は俳優を使わずに、一般の方に舞台に上がってもらうという作品をつくることが多くて、今回は、それぞれの国で介護や介助の仕事をしている方に声をかけました。日中韓というのが大きなテーマとしてあるんですけれども、その題材として介護の現場を扱っています。

——舞台ではどのような稽古をされているのでしょうか?

村川 非常にシンプルです。彼らが毎日やっている仕事を舞台上で実際に再現してもらっています。ですので僕が台本を用意するというわけではありません。
介護の仕事というと1日8時間、10時間などの非常に長時間にわたるのですが、まず最初に彼らが一通りどういった介護の仕事をしているのかを見せてもらいます。その上で僕がシーンを選び、再構成しています。

——日常の介護の現場を見ているわけですか。かなりドキュメンタリーの要素がある作品のように見受けられます。介護士さんは出演者として出演していると言うことですけれども、介護される側の方は出演するのでしょうか?

村川 介護される側の人は、実際に障害をお持ちの方に出ていただくわけではありません。詳しくは本番を見ていただければと思います。

——これまでも村川さんの作品をいくつか見させていただいていますが介護士さんが出られる作品でいうと、『ツァイトゲーバー』(2011)が面白くて印象に残っています。今回の作品はこの発展版と言う事で、日中韓の介護の現場ということがテーマになってくるのでしょうか?

村川 この三カ国は未だ解決しがたい問題がたくさんあるし、日々テレビでも中国と韓国のニュースがない日がないくらいの状態だと思います。そんな現状の中、何か1つや複数の問題を取り上げて、それに対して自分なりの答えを出して、それをメッセージとしてお客さんに伝えなければならないのかな、と最初は考えました。
ただ、1年ぐらいかけてこの作品を構想したんですけれども、たかが1年くらいで歴史的な問題や政治的な問題を扱うということ自体がおこがましいんじゃないかと思うようになったんです。そこでじゃあどうするのかといった時に、現代社会の中にテレビや新聞、インターネットあらゆるところでコミュニケーション不全があったりとか、誤解があったりとかそういう状況があると思うのですが、それをそのまま提示することの方がお客さんの無意識に働きかけることになるんじゃないかと考えました。

できるだけ日常での日中韓、それぞれの国に対する様々なものを、そのまま再現するために介護の現場というのはテーマとして非常に適しているんじゃないかと考えました。
介護すること、つまり人が人を「世話する」、「世話される」という人間の関係性というのは、今後世の中がどうなろうとも絶対変わらないことだと思います。
いつの時代にもあることだし、そこに僕は普遍的な人間の感覚を感じました。
日中韓の間には様々な問題がありますが、それぞれの国で介護の仕事をされている方、それを利用している方、その現場というのはどの時代も変わらないものなんじゃないかということが表現できたらいいなと思っています。

——日中韓の出演者の方々は介護をする仕事ということは共通していると思うのですが、逆に違いなどは感じられましたか?

村川 人によって介護の仕方や利用者の方に対する接し方というのは違うし、利用者がどんな方かによって仕事の内容や、介護士の振る舞いも変わるはずです。国によってどういう違いがあるのかは、本番を見て確認してもらえたらと思います。ただ、介護することというのはどこの国もあまり大差がないのではないかと思っています。人間の形は同じですから。

——実際に村川さんは中国と韓国にも行かれ、ワークショップなどを行われたとお聞きしました。
どんなワークショップで、どんなリサーチをされたのでしょうか?

村川 北京での出来事ですけれども、介護士の派遣会社の経営者にまず連絡をし、介護士を紹介してもらえないかという話をしたところ、いきなり2〜30人を紹介してもらえて非常に驚きました。簡単に説明しただけなのに、こんな大人数が集まるなんて予測していませんでした。一度稽古場に集まってもらい、一人ずつ普段の介護の仕事の様子を見せていただくのですが、その過程で嫌な顔ひとつせずに、皆さん協力してくれました。

——最後にメッセージをお願いします。

村川今回の作品は介護を「する」と「される」という人間の関係性を大切にしつつ、それが行われる場所、つまり利用者の方の部屋の雰囲気が見えてくることも重視しています。
介護士の振る舞いの中から、部屋の雰囲気がまるごと見えてくるというような。舞台上には最低限のものしかなくて、ほぼ何もないような状態です。実際にドアがあるわけではないけれども、ドアを開ける仕草をする。洗い物をする。テレビをつける。そのような舞台の作り方をしているので、お客さんには、より多くのことを想像してもらいながら見てもらいたいですね。

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