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京都国際舞台芸術祭 2017

FEATURES:Other

『tower (THEATER)』に関する覚え書き

本作は、金氏徹平が2001年から描き続けているドローイングシリーズ「tower」、2009年制作の映像作品「Tower」の舞台作品化。これまで様々なメディアを使って取り組んできたコラージュの手法による取り組みの集大成的な展開でもある。

舞台上に約6mの、大小いくつもの孔の空いた、抽象的な建築物である「tower」を建築ユニットのdot architectsと共に、絶えず様々な物や現象や人が出入りする機構を含めて制作。それらの機構やイメージを基に小説家、劇作家、演出家、俳優、ミュージシャン、アーティストら様々なジャンルで活動するアーティストたちがパフォーマンスや演劇を、時にはそれぞれの領域を逸脱したり、放棄したり交換しながら制作する。

プロローグ: 
絶え間なく活動する「tower」。舞台上の「tower」は見る対象でありながら、内側から誰かに見られているようでもある。そして劇場の建物や仕組みの中に立つ建築物である「tower」は入れ子状のもう一つの構造を持っている。
舞台袖や「tower」の内側でも、絶えずパラレルに様々なアクションが繰り広げられる。

チャプター1:
小説家 福永信による描き下ろしのテキストで、演出も福永が担当。出演、青柳いづみ。
眠りながら両親とその娘を演じる俳優が登場する物語。現実、フィクション、身体、物、言葉、イメージ、それらのスケールの変転が始まる。

チャプター2:
構成、荒木優光、小松千倫、出演、荒木優光、小松千倫、原田拓哉、迫鉄平、黒川岳、小林椋ほか。
「tower」を一つの楽器として捉えて演奏する。

チャプター3:
建築家 原広司により60年代に発表された「有孔体」の理論についての建築家 槻橋修による解説を完全コピーした青柳いづみによるレクチャー。

チャプター4:
contact Gonzoと和田晋侍のドラムによるパフォーマンス。「tower」の仕組みや成り立ちを揺さぶり、垂直に立ち、中身の見えない建築物に抗っているようでもあり、想像力を使って共演しているようでもある。

チャプター5:
岡田利規による書き下ろしのテキストが、「tower」の中を意外な方法で想像させ、「tower」の謎は深まり、存在感はまたも変形する。出演、オオルタイチ、三ヶ尻敬吾(contact Gonzo)、荒木優光、原田拓哉、迫鉄平、青柳いづみ。

チャプター6:
出演者全員が何かのパートを担当する新たな“バンド”を結成し、和田晋侍が所属するバンド、巨人ゆえにデカイの名曲「たてもの」を演奏する。

エピローグ:
「tower」はなおも活動し続ける。そして観客もまた動き始める。
 


 
・「tower」は抽象的な建築物であり、世界や都市や身体の流動性と、その無機質な容れ物としての建築との対立であり対話であり、断絶であり接続であり、ただの戯れでもあるような。
そこに様々な人がやって来ては去って行き、出ては入ってを繰り返す。
どこでも無い場所に立っている何でもない構造物としてのリアリティ。それは想像の発生装置として機能するのではないか。
 

 
・「tower」を取り巻く複数の短い物語がある。それとは無関係もしくは関係しながら常に運動する建物が背後にある。その内側が見えない「tower」は、はるか遠くの建築物であり、近所の謎の建築物でもある。「tower」そのものが、昔住んでいた団地、有名建築、誰かの机の引き出し、古代の遺跡、原発の建屋、犬小屋、ゴミ箱、何を作っているのかわからない工場、歴史的な出来事が起こったビル、などを演じ、時間や空間が入れ替わり、混ざり合う。実際に公演が行われる劇場とも入れ子状になる。
 

 
・「tower」シリーズのドローイングを始めたのは海外に短期留学している時、慣れない土地で引きこもっていた状況だった。そんな状況でさらに9.11のニュース映像が毎日テレビで流れていて、言葉もよくわからないままそれを観ていて、映像と建築と身体(と言葉)の関係について考えていた。
 

 
・舞台上のタワーが、場面や状況によって、歴史上の様々な建築物に変化していくというアイデアの元に、美術史の中での個人的な身体や視線やアクションと建築物についての作品との繋がりも考えていた。特に、ハイ・レッド・センターのドロッピングイベント、ゴードン・マッタクラーク、イブ・クライン、ウォーホールのエンパイアステイトビル、クリストなどが重要だと思っている。あとはビートルズのルーフトップコンサート、赤ん坊をマスコミに披露するマイケル・ジャクソン、あさま山荘事件のニュース映像など。
 

 
 
(トップ画像) 『tower (THEATER)』稽古風景 撮影:松見拓也 提供:京都市立芸術大学
(作品画像) 提供:金氏徹平

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