公式プログラム

小泉明郎

CONFESSIONS

小泉明郎《最後の詩》2013 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 AUTUMN」京都芸術センターでの展示風景 撮影:守屋友樹

人間の精神の実験室
独自の語りの様式を用い、演劇的とも評される美術家の注目作を展示

内奥の感情や記憶をテーマとした映像作品で人間の心理を探求する小泉明郎。彼の作品が演劇的とも評されるのは、第一に、登場人物の演技と、それに対する小泉本人の指示出しのような演劇的状況を、そのままカメラに収めることを常套手段として用いているためだろう。しかし、意図された役柄ではなく別の何ものかが登場人物に憑依し、演技という枠を越え出る瞬間、過剰なものを呼び込んだ異様な心理劇へと変化する。その意味で小泉の作品は、映像という「メディア=霊媒」による口寄せの儀式であるといってもよいだろう。

本展では、「告白」をテーマに小泉の近作から選出した二作品を展示する。第二次世界大戦の日本兵のトラウマに関する証言を再現する《忘却の地にて》と、匿名の人々が各々の心の奥底の思いを露わにする《最後の詩》。いずれの作品も、自己のアイデンティティを担保するはずの記憶や感情が他者へと転移していき、それらの所在が曖昧になっていく感覚をもたらすだろう。「告白」という語りの形式が呼び込んでしまう「過剰なもの」を浮き彫りにしながら、誰によって、何が、語られ得るのか/語られ得ないのか―またそのことは観る者にとってどのような意味を持つのか―を問いかける。

《最後の詩》
2チャンネル・ビデオ・インスタレーション
2013年
小泉のFacebook上での呼びかけに応じた、匿名の個人6名へのインタビューと都市の風景から構成される。素性不明の彼らに覆面を被らせ、人前では絶対に言えないような心の奥底の思いを打ち明けるように小泉は促す。彼らの声は、東京の街頭のフィールドレコーディングの雑多な音によって吹き替えられて再生される。

《忘却の地にて》
2スクリーン・ビデオ・インスタレーション、絵葉書
2015年
本作は、21歳の時に交通事故で脳に損傷を受け、それ以来、記憶障害を抱えて生活してきた田中伸弘氏と共に制作された。小泉は田中氏に、第2次世界大戦の時に中国で使役した一人の日本兵の証言を記憶して、読み上げるよう依頼する。証言の内容は、この兵士が機密任務で少年を殺害しなければならなかったトラウマに関するものである。しかし、カメラが捉えたのは、田中氏が証言を思い出そうとすればするほど言葉が記憶からこぼれおちていく姿であった。

小泉明郎《最後の詩》2013 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 AUTUMN」京都芸術センターでの展示風景 撮影:守屋友樹 小泉明郎《最後の詩》2013 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 AUTUMN」京都芸術センターでの展示風景 撮影:守屋友樹 小泉明郎《忘却の地にて》2015 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 AUTUMN」京都芸術センターでの展示風景 撮影:守屋友樹 小泉明郎《忘却の地にて》2015 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 AUTUMN」京都芸術センターでの展示風景 撮影:守屋友樹 小泉明郎《忘却の地にて》2015 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 AUTUMN」京都芸術センターでの展示風景 撮影:守屋友樹 小泉明郎《忘却の地にて》2015 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 AUTUMN」京都芸術センターでの展示風景 撮影:守屋友樹
YEAR
2016 AUTUMN
DATES
10.28(金)-11.27(日)
VENUE
京都芸術センター ギャラリー北・南
CITY
横浜、日本
CATEGORY

小泉明郎
Meiro Koizumi

HP: http://www.meirokoizumi.com/

1976年群馬県生まれ。横浜市在住。国際基督教大学卒業後、ロンドンのチェルシー・カレッジにて映像を学ぶ。2001年にベックス・フューチャー学生部門大賞受賞。2003年に茨城県アーカス・スタジオに半年間滞在。2005年、文化庁新進芸術家海外留学制度より助成を受け、オランダ国立芸術アカデミー(ライクスアカデミー・ファン・ベールデンデ・クンステン)に2年間滞在。2012 年には上毛芸術文化賞を受賞。主な個展に「空気」(無人島プロダクション、東京、2016)、「捕われた声は静寂の夢を見る」(アーツ前橋、2015)、「Project Series 99: 」(ニューヨーク近代美術館、2013)、「Stories of a Beautiful Country」(Centro de Arte Caja de Burgos [CAB]、ブルゴス、スペイン、2012)、「MAM Project 009:」(森美術館、東京、2009)など。
主なグループ展に「MOTアニュアル2016:キセイノセイキ」(東京都現代美術館、2016)、「Ten Million Rooms of Yearning: Sex in Hong Kong」(パラサイト、香港、2014)、「深圳ビエンナーレ」(深圳、中国、2014)、「Affekte」(クンストパレス・エアランゲン、ドイツ、2014)、「幸福はぼくを見つけてくれるかな? ─ 石川コレクション(岡山)からの10作家」(東京オペラシティアートギャラリー、2014)、「日産アートアワード2013」(Bank Art 1929、横浜、2013)、「六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト―来たるべき風景のために」(森美術館、東京、2013)、「フューチャー・ジェネレーション・アート・プライズ2012」(ピンチュック・アートセンター、キエフ、ウクライナ、2012) 、「アート・スコープ2009-2011─インヴィジブル・メモリーズ」(原美術館、東京、2011)など。

コーディネート京都芸術センター
主催KYOTO EXPERIMENT