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『フィフティ・グレード・オブ・シェイム』

Photo by Doro Tuch Photo by Doro Tuch

10月24、25日上演の、ドイツの女性パフォーマンス集団、She She Popによる『フィフティ・グレード・オブ・シェイム』。観客の皆さんにもっと楽しんでいただくために、この作品で取り扱っている二つのテキストについてご紹介します。

『春のめざめ』
ドイツの劇作家、フランク・ヴェデキントの戯曲『春のめざめ』は1891年に出版され、1906年にベルリンのドイツ座で初演した。「子どもはどうやってつくられるのか」というような疑問は子供の頃、誰でも思ったことがあるだろう。『春のめざめ』もそのような純粋な疑問から展開されている。ドイツのギムナジウム*で学ぶ思春期の少年少女が、性にめざめ、大人たちに抑圧され、やがて事態は悲劇へと転じていく物語。中心人物はギムナジウムの優等生メルヒオールと、その友人の劣等生モーリッツ、同級生の少女ヴェントラの3人。教師や親、大人たちは性を悪として扱い、性教育をするどころか、子供たちには考えることさえ禁じている。メルヒオールはモーリッツに「子供をつくる方法」を図解入りの文で説明すると約束する。長い間に親に冷たく扱われ、思春期による急な体の変化と学校での競争社会に耐えられず、ピストル自殺をするモーリッツ。メルヒオールは強姦のようにしてヴェントラと肉体関係を結び、この結果ヴェントラは妊娠する。しかし母親によって堕胎薬を飲まされ、ヴェントラは死んでしまう。モーリッツの遺品の中から「子供をつくる方法」についての文書が見つかり、ヴェントラとの関係も発覚したメルヒオールは、親によって感化院に入れられてしまう。『春のめざめ』は堕胎、セクハラ、同性愛、ドメスティック・バイオレンス、自殺、青春期の子供達の自慰行為、などを取り扱い、社会にとってセンシティブな話題に触れたため検閲され、上演禁止の措置をとられたこともあった。

*ギムナジウム:ヨーロッパの中等教育機関。日本でいう中高一貫教育に近い。

 
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は2011年に書籍化されたイギリスの女性作家E・L・ジェイムズによる官能小説。1億部以上も売り上げた大ベストセラーである。2015年にアメリカで映画化され、名前だけでも耳にしたことがある人もいるかもしれない。主人公の女子大学生アナスタシア・スティールが、若く有能な大富豪の男性、クリスチャン・グレイと出会い、互いに惹かれ合う。しかし、クリスチャンは普通の恋愛には興味がなく一般的な嗜好と異なっていること、彼が求めたのは愛を交わす関係ではなく、BDSM(SM)の主従契約を結ぶということであった。アナスタシアは従属者になり、サディストの性的嗜好に対応しようと努力するが…。本のタイトルは有能な青年クリスチャンの輝いている光の裏側に50の影(フィフティ・シェイズ)が隠されていることを意味している。ご覧のように、今回の作品のタイトルは小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』からつけられている。

She She Popの『フィフティ・グレード・オブ・シェイム』では、舞台上で性と恥に関する講義から始まり、講義の中で様々な性経験を私たちに提示します。舞台上の人物の個人的経験が、私たち自身の経験と鏡のように照らし合わせているようにも見えてくるようです。「恥の感覚というものはいかに私たちに入り込むのか」「人の羞恥心は教育により生まれるのではないか」、恥とセクシュアリティを繰り返し挑発するかのような問いかけを、ぜひ劇場で体験してください!

テキスト:侯文勝(KYOTO EXPERIMENTアンバサダー)

ARCHIVE

  • She She Pop『フィフティ・グレード・オブ・シェイム』 京都府立府民ホール “アルティ” 撮影:井上嘉和

    She She Pop

    『フィフティ・グレード・オブ・シェイム』

  • She She Pop『春の祭典——She She Pop とその母親たちによる』 京都府立府民ホール“アルティ” 撮影:井上嘉和

    She She Pop

    『春の祭典ーShe She Pop とその母親たちによる』

  • She She Pop『シュプラーデン(引き出し)』 京都芸術センター 講堂 撮影:阿部綾子

    She She Pop

    『シュプラーデン(引き出し)』