電力と権力を探して [展示]
10.11(Sat)–11.16(Sun)
無料
レバノンの停電問題と権力の闇を
告発する、愛と復讐の宴がはじまる
中東の小国レバノンが、数十年間に及ぶ電力危機とこれに端を発する政情不安に見舞われてきたことをご存知だろうか。国から配給される電力は1日わずか数時間のため、国民は独自の解決策に頼らざるをえない。状況は2020年の金融破綻や昨今のイスラエルによるレバノン侵攻によって悪化の一途をたどるばかりだ。
レバノン内戦下(1975–90)に生まれたターニヤ・アル゠フーリーと歴史家の夫 ズィヤード・アブー・リーシュは、ある停電の夜、この問題の根源を解明するプロジェクトに乗り出した。本作は「謎解きをするには最高のカップル」と自ら語る二人が見つけた事実を、観客参加型のレクチャー・パフォーマンスで告発していくものだ。
ある祝いの夕べへ誘われる参加者たち。供されるのは、複数の国で収集した公文書や記録文書の数々だ。これまで隠蔽されてきた資料を含むこれらは、レバノンの電力インフラと旧宗主国や欧米間の覇権争い、マネーゲームをめぐる歴史の闇の痕跡。ひとつずつ手にとって見ていくことで、観客自身もこの歴史の継承者となっていく。上演後の空間はインスタレーションとして保存され、会期終了まで一般公開される。
アーティストプロフィール
ターニヤ・アル゠フーリー
ベイルート(レバノン)、 ニューヨーク(アメリカ)
ライブ・アーティスト。ニューヨークのバード大学で、演劇・パフォーマンスプログラムの優秀レジデント・アーティストに選出、准教授を務める。同大学人権芸術センターの設立ディレクターでもある。ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校で博士号を取得。イギリスのアーティストによるコレクティブ、フォーレスト・フリンジのアソシエイト・アーティスト。レバノンで都市のリサーチとライブ・アートに関わるコレクティブ、ディクタフォン・グループの創立メンバー。集団的記憶の構築と連帯感の醸成について考える、双方向的なインスタレーション作品、パフォーマンスを創作する。ターニヤ・アル゠フーリーの作品は、アーティスト本人や協働者によって集められ、取捨選択された触覚的、聴覚的、視覚的な素材によって命を吹き込まれ、最終的には観客の参加によって変容する。それらの作品は、強制退去、国境制度、民営化、国家による暴力、空間の政治学といった問題を扱い、いくつもの言語に翻訳され、6大陸、32ヶ国で、美術館からケーブルカーまで、様々な場所で発表されている。ハーブ・アルパート芸術賞、ソロス芸術フェローシップ、ベッシ―賞優秀作品賞、ANTI国際ライブ・アート賞、トータル・シアター賞、ザ・アーチーズ・ブリック賞を受賞。これまでにANTIフェスティバル(フィンランド)のアドバイザリー・ボードに参加し、現在はCAPIm-The Centre for Art and the Political Imaginary(芸術と政治的想像のセンター/スウェーデン)でアドバイザリー・ボードのメンバーを務める。
ズィヤード・アブー・リーシュ
ベイルート(レバノン)、 ニューヨーク(アメリカ)
近代中東・北アフリカ(MENA)地域の研究者。アメリカのバード大学で、人権と中東研究の准教授を務める他、人権と芸術に関する修士課程のプログラムを統括する。研究の中心は、特にレバノンとヨルダンにおける、国家の形成、経済発展、大衆動員。アメリカのジョージタウン大学・現代アラブ研究センターでアラブ研究の修士号、ロサンゼルスのカリフォルニア大学で歴史学の博士号を取得。著書に『The State of Lebanon: Popular Politics and Institution Building in the Wake of Independence(レバノン国家:民衆政治と独立後の制度構築)』(スタンフォード大学出版局より出版予定)、共同編著に『The Dawn of the Arab Uprisings: End of an Old Order?(アラブ蜂起の夜明け:旧体制の終焉?)』(2012)がある。「Garbage Politics in Lebanon(レバノンにおけるゴミをめぐる政治)」「Municipal Elections in Lebanon(レバノンの地方選挙)」「Lebanon Beyond Exceptionalism(レバノン—例外主義を超えて)」など、いくつもの記事や書籍の章を執筆している。「アラブ研究ジャーナル」およびウェブマガジン「Jadaliyy」の共同編集者、レバノン論文夏季研修の共同ディレクターも務める。
主催:KYOTO EXPERIMENT、京都市立芸術大学