リサーチ
Kansai Studies
Kansai Studies は、フェスティバルが根ざす関西圏を対象としたリサーチプログラム。アーティストの視点で地域の文化や風土をフィールドワークすることで、未来の芸術表現を豊かにする「原石」を掘り起こしていくものだ。2024年度は3名のリサーチャーが現在、各自が設定したテーマでフィールドワークを行っている。
3人のリサーチ中に起こったあらゆる出来事や発見、思考はテキストや映像で記録され、特設ウェブサイトで随時公開・アーカイブされ、未来の企画やクリエイターのためのナレッジベースとなっていく。観察やリサーチを通して、身近なものやコトを感性豊かに、解像度高くとらえる実践は、観客であるわたしたちの「ものの見方」にも、きっと新たな気づきや刺激を与えてくれることだろう。
会期中には各リサーチテーマについて、またフィールドワークを通しての発見、未来に向けて考えることなどをクロストーク形式で語り合うトークイベントを開催する。
リサーチャー:石川琢也(教育者/研究者/Director)、内田結花(ダンサー/振付家)、前田耕平(アーティスト)
☞ Kansai Studies 特設サイト
これまでのリサーチ記録をご覧いただけます!
kansai-studies.com
【2024年度リサーチャー / リサーチテーマ】
石川琢也
詩的なテクノロジーとしてのパーティ、職能、空間について
「詩的なテクノロジー(poetic technologies)」とはアメリカの人類学者でアナキスト、アクティヴィストでもある故・デイヴィッド・グレーバーの言葉であるが、それは『不可能であるような放縦な空想を実現させるための知識の総動員』された状態であり、つまりクラブなどのパーティで立ち現れる主体的かつ自由な空間が実現している状態を表したものである(その逆は「官僚的テクノロジー」とされる)。そこにはDJやオーガナイザーをはじめ、空間性も含めたあらゆる構成要素がその状態に寄与している。そういったカルチャーやその成り立ちについてリサーチを行うべく、関係者へのインタビューや街を徘徊することを進めてゆきたい。
内田結花
ニュー・フィールドワーク京都編
京都に住まう「鳩」を観察し、記録(写真、映像、テキスト、スケッチ、聞き込みなど)と考察を重ねる。鳩における、関西らしさや京都らしさはあるのかないのか。学術的なフィールドワークではなく、定石や体系的な方法論を無視した、あくまで素人による身近な動物へのフリースタイルな接近方法を模索する。京都の鳩をリサーチするために、まずはロームシアター京都の中庭から始める予定で、知っている場所を違う目線で見てみることの実践を進める。
前田耕平
「あわいの島」動物園をめぐる話
陸、海、空の120種、1600頭の動物が暮らすテーマパーク南紀白浜「アドベンチャーワールド」との共同プロジェクトにて「動物園の未来」をテーマに、2022年よりフィールドワークとリサーチを行っている。この度のリサーチを経て、2024年秋より同園内にて映像作品《あわいの島》と展覧会を行う予定である。今展に先駆けてKansai Studiesでは、現在までの動物園に関するリサーチや実験的な制作の一部共有を行う予定。動物園という場所性、動物園動物という存在、課題や今後の展望について。
10.16(水)19:30-21:00
料金:1,000円(1ドリンク付き)・予約不要
言語:日本語
石川琢也(いしかわ・たくや)
教育者 / 研究者 / Director /京都芸術大学 専任講師。UI・UXデザインを職務とした後、2013年に情報科学芸術大学院大学[IAMAS]に進学。2016年山口情報芸術センター[YCAM]エデュケーターに着任し、「RADLOCAL」などの教育・地域プログラム、音楽プログラムの企画制作を担当。2020年より現職。日野浩志郎「GEIST」プロデュースをはじめ、音楽イベント、アート制作のディレクション、クラブカルチャーの文化史・コモンズ研究を行う。共著に『新世代エディターズファイル 越境する編集ーデジタルからコミュニティ、行政まで』。 https://linktr.ee/taabon
内田結花(うちだ・ゆか)
ダンサー・振付家。上演環境や状況に振付けられる身体をテーマに、これまで屋内外のあらゆる場で自作品を発表。主な作品に、暮らす日々を記録した日記を振付に踊る『暮らしのシリーズ』(2014, 19-23)、憧れ尊敬する人々を想像力と妄想力を駆使し(誤解含む)取り込んでいく『リスペクトピープル』(2020-)、フィールドワークの素人たちで鳩のコミュニティを探る『ニュー・フィールドワーク』(2023-)などがある。また、ダンサーとして、さまざまな振付家や作家の作品に出演している。幼少期より、セキセイインコやオカメインコなどの鳥、熱帯魚やメダカなどの魚、カブトムシなどの虫、犬などと生活を共にしてきた。 https://yukauchidaweb.tumblr.com/ Instagram
前田耕平(まえだ・こうへい)
アーティスト。1991年和歌山県生まれ。関西を拠点に活動。2017年京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻構想設計修了。自身のルーツとなる紀伊半島での風土や体験、同郷の博物学者である南方熊楠の哲学を根幹に「自然と人の関係や距離」をテーマに活動。国内外の自然地形や生態系、文化や信仰に目を向け、フィールドワークやプロジェクトから写真、映像、パフォーマンス、インスタレーションなどの作品を制作。境界を問い、不可視に触れ、時に祭事のようにその過程と行為を展開する。近年の展覧会に「タイランドビエンナーレ 2023」(チェンライ)、個展「点る山、麓の座」(国際芸術センター青森)など。 https://koheimaeda.com Instagram
リサーチメンバー:石川琢也、内田結花、前田耕平
コーディネーター:竹宮華美
ウェブサイト制作・ロゴデザイン:松見拓也
協力:BnA Alter Museum
主催:KYOTO EXPERIMENT