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演劇
magazine
2022.10.20
今週末10.21-23に上演のアーザーデ・シャーミーリー『Voicelessness —声なき声』。上演に向けて演出のシャーミーリーのコメントをお届けします。
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この文章を書いている今も、私が生まれ住む地では、女性たちが基本的権利を求めて街頭に繰り出し、大規模な抗議運動が行われています。この運動によって世界中の人々が団結し、抑圧と不正義に対抗しています。若者たちが果敢にも街頭を社会運動の場に変えた今、この演劇作品は現代の観客/抗議者たちに何を語りかけるでしょうか。
『Voicelessess —声なき声』は、私にとってパーソナルな作品です。とはいっても自伝とかドキュメンタリーではありません。どちらかというと、父の死に対する悲しみや父を失ったことのトラウマを扱っています。けれども、そこから距離を置いてみると、私の個人的なSF物語は、人々が真実に対する権利や知る権利を要求してきた歴史の延長線上にあるということが見えてくるのです。
この作品では、テクノロジーを用いて過去の未完の物語を締めくくろうと奮闘する若い女性の姿を描きながら、「現実」という概念について、また、現実と記録資料(ドキュメント)——過去の操作された供述、歪められた証言、作られた目撃者を通して得るほかない記録——との関係性について探っています。
私にとって、『Voicelessess —声なき声』が扱っている問題は現代のテーマなのです。それは、声なき状態での絶えざる格闘。それがどれだけ不可能なことのように思われても、真実を解明するために道を探り、のみならず、ありうべき未来にもそれが見出せる道を探すこと。空中を漂う聞こえない声を聞き届けるための格闘。すなわち、「忘却に対する記憶のあらがい」なのです。
アーザーデ・シャーミーリー
2022年10月5日
テヘランにて