「観て、考える」ことから見つめる
演劇の可能性、世界の紛争地域の今
『不可能の限りにおいて』は、ポルトガル出身の劇作家、演出家でアヴィニョン演劇祭(フランス)のディレクターを務めるティアゴ・ロドリゲスが、赤十字国際委員会と国境なき医師団のメンバーら30人との対話を重ねて創作した戯曲だ。紛争地域で人道支援を行う彼らの孤独や苦悩を描き話題となった本作を、今回はリーディング公演*(日本語版)として上演。今野裕一郎が主宰するパフォーミングアーツ・コレクティブ「バストリオ」が演出・出演を手がける。
難民キャンプをどう運営するか、生と死の耐えがたい決断にどう向き合うか。世界を変えられない無力さに、絶望の淵で見た人間の尊厳に何を思うか—。舞台上に現れるパフォーマーが複数の証言者となり、“不可能”な世界に従事する人々の声をリレーのようにつないでいく劇中では、実在する場所や人物の名前は明かされない。私たちは想像力の限りを広げて物語を手繰りよせ、目の前に立ち上げていくこととなる。
終演後は演出家や日本語版の翻訳者、人道支援の専門家らによるトークを開催。テーマは戯曲を味わう醍醐味から、紛争地域や国際支援の現状まで。「舞台を観た後」から豊かに広がっていく、対話と思考の時間を楽しんでほしい。
*基本的には舞台装置を設けず、俳優が台本を手にして演劇をする公演(今回はさまざまな演出も行われる)。
[リーディング公演]
『不可能の限りにおいて』
作:ティアゴ・ロドリゲス
翻訳:藤井慎太郎
演出:今野裕一郎(バストリオ)
出演:坂藤加菜、佐藤駿、砂川佳代子、中條玲、橋本和加子、本藤美咲
音響:SKANK/スカンク
[トーク]
ゲスト:桑名 恵(近畿大学国際学部教授)、藤井慎太郎(早稲田大学文学学術院教授)、バストリオ
ロームシアター京都 “いま”を考えるトーク × KYOTO EXPERIMENT Super Knowledge for the Future [SKF] プログラム
主催:KYOTO EXPERIMENT、ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)、京都市
助成:令和7年度 文化庁 文化資源活用推進事業
協力:藤井慎太郎