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【批評プロジェクト 2024】選出作品発表!

2024.12.28

撮影:脇田友

KYOTO EXPERIMENT 2024では、対象演目のレビューを募集する批評プロジェクト 2024を実施しました。

演劇研究者の梅山いつき氏による審査を経て、3件のレビューを選出しました。梅山氏がメンターとなってアドバイスを行い、ブラッシュアップ期間を経て完成したレビューを、本ウェブサイトのmagazineページにて公開します。さらに今回選出された3件のレビューから最終選出作品1件を選出します。最終選考結果については、1月中旬頃にウェブサイトで発表します。

【選出レビュー】

(五十音順)

各務文歌
『スタンドバイミー』レビュー ~反転世界の水槽から~

雁木 聡
ためらいと赦しの演劇

玉地未奈
死者の弔い方についてー「歩く」という行為を通して

【審査、メンター】

梅山いつき (演劇研究者)

【対象作品】
穴迫信一 × 捩子ぴじん with テンテンコ『スタンドバイミー』
2024年10月18日(金)–10月20日(日)

【全体講評】
今回、批評プロジェクトの審査・メンターを担当することになりました。わたしと批評について振り返ってみると、はじめて劇評を書いたのは19歳の頃だったと記憶しています。世田谷パブリックシアターで開かれていた西堂行人氏の講座で練肉工房の作品について書きました。舞台上の身体をどう描写するか考えていて、たしか「言葉と言葉のあいだを穿つ」だったような、「うがつ」という響きが去来した時の嬉しさ。うまく書こうとか、小難しい知識を散りばめようなんてことよりも、作品から感じとったことを言葉に置き換える作業がとにかく楽しかったのをおぼえています。今回、投稿された6本の劇評はどれも書くことの楽しさに躍動していました。それは今回の対象作品に「言葉にしたい」「語りたい」と思わせる魅力があったことと、作品についておそれずのびやかに語れる雰囲気がKYOTO EXPERIMENTの周辺にあったからではないかと想像します。このプロジェクトでは最終的に1本を選出する関係で、「審査」というフィルターがはたらきますが、そのこととは別に、「言葉にしたい」「語りたい」という批評の種も大切にしたいと思いました。そこで、今回は6名の投稿者の方全員にフィードバックをさせていただき、投稿者の書くことの喜びに伴奏させていただくことができました。変更に応じてくださった投稿者のみなさん、事務局に感謝いたします。

さて、審査ではまず3本選出します。そこでポイントとしたのは、書きはじめ、ないしは作品分析の入り口の小ささ、繊細さです。よく文章指導の授業で「入り口は小さく、出口は大きく」とアドバイスしています。作品についてできるだけ具体的で小さな気づきから書きはじめ、それを社会・歴史的背景や作家の作風、思想など外的要素と結びつけながら膨らましていき、最後、大きなメッセージ(結論)に至ることを目指します。今回の対象作品『スタンドバイミー』は「死」がモチーフになっています。書き慣れていない人は、いきなり、「死とはなにか?」と大風呂敷を広げて書き始めてしまいますが、それだと結論が一般論になりやすく、作品の固有性も書き手の独自性も出にくくなってしまいます。今回選出した3本は、フライヤーのデザインやウォーキングマシン、床に置かれたアルミシートなど作品を構成するある一部分に注目し、作品全体へと話を広げていこうと試みており、独自の視点による批評が展開されていると評価しました。

一方で今回の対象作品『スタンドバイミー』は非常に情報過多で、どこをつまみ出して論じたらいいか悩ましい作品です。まず、異なるジャンルで活躍しているアーティストによる初のコラボレーションであること。その一人であるエレクトロニクスミュージシャン・DJのテンテンコは「テンテンコ」として舞台上に「いる」のですが、彼女の存在とその音楽はどういう次元にあるものとして捉えたらいいのか?出演者の身体性もバラバラで、とりわけ異彩を放っている能楽師の田中春奈の存在をどこまで重要視すべきか?会場となった堀川御池ギャラリーの空間構成も気になるところで、考えるところは多岐に及びます。そうした作品を構成する多様な要素をうまく整理し、ひとつにまとめあげる力も書き手には求められるところでしょう。以下、選出した3名の批評について講評します。

1)各務文歌さん
公演フライヤーのデザインに注目し、それが反転しているのはなぜか問うところから作品世界に切り込もうとするところがユニークでした。作品を分析するにあたって、各務さんは本作の特徴のひとつである能の存在意義について、「救済」をキーワードに読み解こうと試み、「死者あるいはその中間でさまよう魂の救済は、確かになされたのだろうか?」と問います。その答えをラストシーンから読み解こうとしているのですが、ラストの出演者たちの戸惑いをどう捉え、描写するか?そのことと反転という冒頭掲げたキーワードはどのように結びつくのかが楽しみな一作です。

2)雁木聡さん
雁木さんは、本作における歩行とその遅さ、多弁な出演者たち、そして能という古典芸能と現代演劇が「ぎこちなく」組み合わさっているところに注目し、「ためらい」と「赦し」をキーワードにそれらを読み解いています。歩行に目が行くのは、ウォーキングマシーンが用いられているためでもありますが、雁木さんはそれを「マシーンによって歩かされる受動的な歩行」として、「意思の介在する能動的な歩行」とは区別しています。また、出演者たちの多弁さには「わかりやすい肯定や否定、あるいは賞賛や断罪を迂回し、思考をどこまでも引き延ばそうとする」効果があると指摘するなど、するどい分析が展開されていきます。そうした躍動する小川のような個別の分析が大河に流れ出る瞬間を期待したいところです。

3)玉地未奈さん
玉地さんは本作品における死者の表象について、夢幻能や加藤周一の『日本人の死生観』を参照することで、より普遍的なものとして位置付けようと試みています。作品をより広い文脈に接続されているところに読み応えがあり、また、やわらかい筆致で丁寧に作品にアプローチしているところに誠実さを感じました。作品分析においては、「歩く」と「境界線の曖昧さ」をキーワードにしながら、本作が結果よりもプロセスを重視する必要性を問いていることを論じようとしています。二つのキーワードをいかに有機的に結びつけながら結論に説得力を持たせられるかがポイントでしょう。

(審査・メンター 梅山いつき)

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