シンポジウム
国際シンポジウム
舞台芸術の創造と受容—その「構造」と「システム」の現在形と可能性について
舞台芸術の創作や発表においては、様々なレイヤーで旧来のシステムが存在している。本シンポジウムでは、こうした構造に疑問を投げかけ新たな制作方法を模索するアーティストやフェスティバルを取り上げ、特にアジア圏の動向に注目しながら国際的な流れを可視化する。新型コロナウイルスの影響により「従来通り」の活動が困難であるいまだからこそ、これからの舞台芸術創造の可能性を本シンポジウムを通して考える。
京都芸術大学 舞台芸術研究センター x KYOTO EXPERIMENT 国際シンポジウム
舞台芸術の創造と受容ーその「構造」と「システム」の現在形と可能性について
セッション① コレクティブな制作体制
9.25 (土) 14:00-16:00
セッション② 共同ディレクションとフェスティバル
9.25 (土) 17:00-19:00
セッション③ 作品と観客
9.26 (日) 16:00-18:00
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9.25 (土) 14:00-16:00
セッション① コレクティブな制作体制
演出家/出演者という従来の「劇団」構造ではなく、複数のアーティストが集まり集合的な創作を行うコレクティブの活動について、アーティストの実践を紐解く。
モデレーター:
内野儀 (学習院女子大学教授、パフォーマンス研究・演劇批評)
パネリスト:
ジューン・タン (プロデューサー、Five Arts Center) / マレーシア
西尾佳織 (劇作家・演出家、鳥公園主宰) / 日本
レザ・アフィシナ (ニューメディア・アーティスト、「ルアンルパ」メンバー・アーティスティックボード、「ルアンルパ アーツラボラトリー」ディレクター) / インドネシア
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9.25 (土) 17:00-19:00
セッション② 共同ディレクションとフェスティバル
近年、舞台芸術フェスティバルにおいても共同ディレクター制が見られる。それぞれのフェスティバルのコレクティブな思考と実践を考える。
モデレーター:
森山直人 (演劇批評家、京都芸術大学 舞台芸術研究センター所長補佐)
パネリスト:
川崎陽子、塚原悠也、ジュリエット・ナップ (KYOTO EXPERIMENT 共同ディレクター) / 日本
ダヴィド・カベシーニャ (アルカンタラ・フェスティバル共同芸術監督) / ポルトガル
JKアニコチェ (パフォーマンス作家、シパット・ラウィン・アンサンブル、Komunidad X 共同エグゼクティブ・ディレクター) / フィリピン
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9.26 (日) 16:00-18:00
セッション③ 作品と観客
これまで劇場のプログラムやフェスティバルで扱われてきたスペクタクルは、同時にさまざまな既存構造を飲み込んで成立しているものでもある。これからの「作品」をどう考えるか? また、既存の言説や批評の軸をはみ出すともいえる、特定のコミュニティに立脚するアートプロジェクトやリサーチについても考える。
モデレーター:
田村かのこ (Art Translators Collectiveディレクター、札幌国際芸術祭2020コミュニケーションデザインディレクター)
パネリスト:
横堀ふみ (NPO法人 DANCE BOX プログラム・ディレクター) / 日本
アンナ・ヴァグナー (フランクフルト・ムゾントゥルム劇場 ドラマトゥルク、共同芸術監督) / ドイツ
スルジット・ノングメイカパム (振付家・パフォーミングアーティスト、Nachom Arts Foundation ディレクター) / インド
内野儀 Tadashi Uchino
学習院女子大学教授、パフォーマンス研究・演劇批評
1957年京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。博士 (学術)。学習院女子大学教授。専門は表象文化論。著書に『メロドラマの逆襲』 (1996) 、『メロドラマからパフォーマンスへ』 (2001) 、『「J演劇」の場所』(2016)。
ジューン・タン June Tan
プロデューサー、Five Arts Center
クアラルンプールを拠点に活動している。アート・コレクティブ「Five Arts Centre」メンバー。インペリアル・カレッジ・ロンドンで生物学を学んだ。卒業後、パフォーミング・アーツに積極的に取り組み、個人的な題材や政治を扱う実験的な作品を製作してきた。同時に、企業の世界でも活動し、企業金融やソフトウェア管理、有害廃棄物リサイクル等、様々なシステムへの理解を深めた。1997年からは、国内外の共同製作において舞台監督、ツアー管理、製作を数多く努めている。アートの創作を支える枠組みやモデルを理解することに関心を持っており、クアラルンプールにあるインディペンデントアートスペース、KOTAK をプログラムしている。2018年から2020年には、TPAM国際舞台芸術ミーティングin横浜にてディレクションを担当した。東南アジアのアート実践者の間でのネットワーク形成に力を入れており、政策変更を提唱する連合「ReformARTsi」にも携わっている。
レザ・アフィシナ Reza Afisina
ニューメディア・アーティスト、「ルアンルパ」メンバー・アーティスティックボード、「ルアンルパ アーツラボラトリー」ディレクター
1977年、インドネシア生まれ。アーティスト個人として、またコレクティブ「ルアンルパ」として、国内外で様々な展覧会やワークショップに携わってきた。アーティストコレクティブのプラットフォームとして、ルアンルパは韓国の光州ビエンナーレ (2002年/2018年) 、イスタンブール・ビエンナーレ(2005年)、シンガポール・ビエンナーレ(2011年)、オーストラリア、ブリスベンのアジア・パシフィック・トリエンナーレ(2012年)、サンパウロ・ビエンナーレ(2014年)、フランス、パリのポンピドゥーセンターでの「Cosmopolis #1」 (2017年) に参加した他、オランダで「TRANSaction: Sonsbeek International」(2016年) の共同キュレーションを手がけた。2022年、ドイツ、カッセルでのドクメンタではルアンルパが芸術監督を努める。
西尾佳織 Kaori Nishio
劇作家・演出家、鳥公園主宰
劇作家、演出家、鳥公園主宰。1985年東京生まれ。幼少期をマレーシアで過ごす。東京大学にて寺山修司を、東京藝術大学大学院にて太田省吾を研究。2007年に鳥公園を結成以降、全作品の脚本・演出を務めてきたが、2020年より3人の演出家を鳥公園のアソシエイトアーティストとして迎え、自身は劇作・主宰業に専念する体制に移行。「正しさ」から外れながらも確かに存在しているものたちに、少しトボけた角度から、柔らかな光を当てようとしている。近年のプロジェクトとして、マレーシアのダンサー、振付家のLee RenXinとの「からゆきさん」の共同リサーチなど。2014年『カンロ』、2018年『ヨブ呼んでるよ』、2020年『終わりにする、一人と一人が丘』にて岸田國士戯曲賞にノミネート。
森山直人 Naoto Moriyama
演劇批評家、京都芸術大学 舞台芸術研究センター所長補佐
1968年生まれ。演劇批評家。京都芸術大学 (旧名称・京都造形芸術大学) 舞台芸術学科教授、同大学舞台芸術研究センター主任研究員、機関誌『舞台芸術』編集委員。同志社大学、立命館大学でも非常勤講師をつとめた。著書に『舞台芸術の魅力』 (共著、放送大学教育振興会)等。主な論文に、「「演劇的」への転回――「舞台演劇」の時代の「批評」に向けて」(『舞台芸術』23号)、「「日本現代演劇史」という「実験」――批評的素描の試み」(『舞台芸術』22号)、「(オープン・ラボラトリー) 構想へ:「2020年以後」をめぐるひとつの試論」(『舞台芸術』20号)、他多数。
ダヴィド・カベシーニャ David Cabecinha
アルカンタラ・フェスティバル共同芸術監督
1987年生まれ。ポルトガル、リスボンを拠点としたパフォーミングアーツのフェスティバル、アルカンタラ・フェスティバルの共同芸術監督。 Lisbon Film and Theatre School で演技を学んだ。2008年からはMala Voadora等のポルトガルの演劇カンパニーや、アーティストのDinis Machadoとともに、パフォーミングアーツの分野で盛んに活動している。また映画監督のJorge Jácome とともに、共同脚本家、俳優、プロデューサー、助監督として映画の分野でも活躍している。2016年から2017年には、Lisbon festival Temps d’Images のディレクションを担当した。2018年にはアルカンタラ・フェスティバルのチームに加わっている。
JKアニコチェ JK Anicoche
パフォーマンス作家、シパット・ラウィン・アンサンブル、Komunidad X 共同エグゼクティブ・ディレクター
アート、文化、開発を横断しながら活動し、パフォーマンス作品を制作している。現代文化研究所 Sipat Lawin Inc. の芸術監督、脱専門的コレクティブ Komunidad X の創設メンバーである。彼の芸術実践は、ブラックボックスでのパフォーマンスから、フィリピン国内外の被災地コミュニティでの作品制作まで多岐に渡る。 2021年は、 Cultural Center of the Philippines による Virgin Labfest のフェスティバルディレクターのほか、eKomunidad Asia Performance Assemblyのヘッドキュレーター、東京芸術祭 Farm Program、Asian Performing Arts Camp のファシリテーターを努めている。
田村かのこ Kanoko Tamura
Art Translators Collectiveディレクター、札幌国際芸術祭2020コミュニケーションデザインディレクター
アート・トランスレーター、Art Translators Collectiveディレクター。現代アートや舞台芸術のプログラムを中心に、日英の通訳・翻訳、編集、広報など幅広く活動。人と文化と言葉の間に立つメディエーター(媒介者)として翻訳の可能性を探りながら、それぞれの場と内容に応じたクリエイティブな対話のあり方を提案している。札幌国際芸術祭2020ではコミュニケーションデザインディレクターとして、展覧会と観客をつなぐメディエーションを実践。非常勤講師を務める東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻では、アーティストのための英語とコミュニケーションの授業を担当している。NPO法人芸術公社所属。
アンナ・ヴァグナー Anna Wagner
フランクフルト・ムゾントゥルム劇場 ドラマトゥルク、共同芸術監督
ドイツ、フランクフルト・ムゾントゥルム劇場のドラマトゥルク・共同芸術監督。舞台芸術学を学んだ後、ベルリンの劇場 HAU Hebbel am Ufer でダンスのアシスタントキュレーター、ムゾントゥルム劇場でダンス部門長を努めた。ムゾントゥルム劇場では、Eisa Jocson、Paula Rosolen、Jetse Batelaan らのアーティストと活動しプロダクション・ドラマトゥルクとして活動している。Tanzfestival Rhein-Main の共同創始者であり、「Indonesia LAB」(2015) や「This Is Not Lebanon」(2021) 等、多数の国際的プログラムのキュレーションや共同キュレーションを手がけてきた。パフォーミングアーツの概念を拡張することに関心を寄せており、「Oper Offenbach」(2018) 「The Greatest Show on Earth – A Performance-Circus for the 21st Century」(2016) 等の特別プロジェクトを数多く立ち上げている。
スルジット・ノングメイカパム Surjit Nongmeikapam
振付家・パフォーミングアーティスト、Nachom Arts Foundation ディレクター
インド、インパールを拠点に、振付家、パフォーミングアーティストとして活動。24歳の時にダンスのキャリアをスタート。インドの伝統的形式・動きの訓練を受け、その後ジャンル横断的なアートや実験的な作品への関心を強めた。Natya Institute of Kathak and Choreographyで振付の学士を取得。マニプールでは数少ない、伝統的文化を超えた現代的ダンス形式を追求しているダンサー / 振付家の一人である。「Nerves」 (2014) と「Folktale」(2016) でPrakriti Excellence in Contemporary Dance Award を受賞。マニプールの Nachom Arts Foundation で芸術監督を努める。
横堀ふみ (よこぼり・ふみ)
NPO法人 DANCE BOX プログラム・ディレクター
神戸・新長田在住。劇場Art Theater dB神戸が活動拠点。下町の劇場という場がもつ可能性を拡張している。世界の様々な地域をルーツにある多文化が混在する新長田にて、独自の国際プログラムを志向する。自宅に日越の文化芸術の交差点「Lang Toi」開設に向けて、ゆっくり準備中。新長田アートマフィア仕掛人・構成員。
主催:京都芸術大学 舞台芸術研究センター、KYOTO EXPERIMENT
本シンポジウムはJSPS科研費JP20H00009の助成を受けたものです。