展示
ミーシャ・ラインカウフ
Encounter the Spatial ―空間への漂流
見えない境界を探る
徒歩、潜伏、遊び
海底に積もる砂を巻き上げながら、前方を見据え、ゆっくりと歩くミーシャ・ラインカウフの後ろ姿。作家がとらえようとしているのは「国境」という不可視の線だ。ここは、イスラエルとヨルダン、エジプト、あるいはジブラルタル海峡のスペインの飛び地セウタとモロッコのあいだ。本作《Fiction of Non-Entry(入国禁止のフィクション)》は、越境困難な陸路ではなく人の手の及ばない海底で、その境界を実際に跨ごうと歩き続ける作家自身のドキュメンタリーでもある。
また、ラインカウフは東日本大震災直後の東京を起点に、ロシア、モンゴル、アテネ、ウィーン……と移動を繰り返し、各都市の安全性を担う巨大インフラ=地下水路や下水道、シェルターなどに潜ってきた。その暗闇から外の世界を見つめた作品《Endogenous Error Terms(内生的エラー)》も同じく展示される。
現代アートの文脈では、ブルックリン橋に掲げられていた星条旗を白旗に変え、その様子をマティアス・ヴェルムカとともに映像作品とした《Symbolic Threats》が有名だろう。本展では、都市や国家における物理的空間のはざま、大きなコントロールシステムの歪みで遊ぶ作家の、新たな探求をのぞき見ることができる。
10.1(土)− 10.23(日)10:00−20:00
*10.1(土)は22:00まで
ミーシャ・ラインカウフ Mischa Leinkauf
ベルリン
ベルリン生まれ、在住のラインカウフは、都市環境の隠された可能性や、国境、規則、建築、障壁を通じた空間の様々な制限を作品で扱っている。準自然的な秩序に介入することで、一時的な苛立ちを生み出し、再コーディングのための空間を開くような状況を引き起こしている。特に、公共空間とアクセス制限のある非公共空間の境界線に焦点をあてている。ラインカウフのクロスメディア活動は、パフォーマンスやビデオ・インスタレーション、映像、写真なども含む。彼の作品は、ベルリン国際映画祭、東京都現代美術館、ボン美術館、カールスルーエ・アート・アンド・メディア・センター、マニフェスタ11、ストックホルム近代美術館、ヘルシンキ市立美術館などの映画祭、美術館、アートスペース、ギャラリーで国際的に展示されている。
「Fiction of a Non-entry(入国禁止のフィクション)」
アーティスト、ディレクター、プロデューサー: ミーシャ・ラインカウフ
水中カメラ:Paul Rohlfs
音響:エド・ダベンポート
所蔵:the artist & alexander levy Berlin - VG Bild/Kunst
「Endogenous Error Terms(内生的エラー)」
アーティスト、ディレクター、プロデューサー: ミーシャ・ラインカウフ
所蔵:the artist & alexander levy Berlin - VG Bild/Kunst
展示設営:十河陽平
映像設営:小西小多郎
音響設営:瀧口翔
グラフィックデザイン:ティルマン S. ウェンデルシュタイン(75W)
コーディネーター:中谷圭佑(京都芸術センター)
主催:KYOTO EXPERIMENT