2023.9.14
演劇
メタファーに秘匿された、小道具たちのアイデンティティ
政治と個の生い立ち、表現との関わりを問うタイ演劇界の最注目演出家、ウィチャヤ・アータマートが、KYOTO EXPERIMENT 2021 SPRING に引き続き2度目の登場。サウンドデザインに荒木優光、ドラマトゥルクに塚原悠也を迎えた国際共同制作作品として今回、新作を上演する。
アータマートはこれまでの作品のなかで、政治的なメッセージの検閲を回避するメタファーとして、さまざまな小道具を舞台に上げてきた。しかし、それは小道具がもつ“物”としてのアイデンティティを、演劇表現を通して抑圧してきたことにはならないか?
今作に俳優は出演せず、出演するのは、ある日の日付、額縁、歌、てるてる坊主、木、ピザ、扇風機などの小道具たち。アータマート本人は、各作品を生み出した政治的出来事や各作品における小道具たちの役割をたどりながら、自らの独裁的な振る舞いを省みる。アータマートは、小道具たちに意味を押し付けてきたことを考え、それらに「応答」する余地を与える。
遊び心がありながら転覆的な演出は、タイ国家のみならず、知らず知らずのうちに大きな権威構造に飲み込まれる自己・他者のありよう、そして過酷で不条理な状況を問い、乗り越える問題提起の方法へのアプローチを示唆するだろう。
9.30(土)14:00 ★◆
10.1(日)13:00 ★♡ / 17:00
★ポスト・パフォーマンス・トーク
◆感想シェアカフェ
♡託児あり ☞申込み (要事前申込。各公演7日前まで)
上演時間:70分(予定)
言語:タイ語(日本語・英語字幕あり)
⚠️開演後は途中入場不可。12歳以上推奨。
一部暴力的な映像が含まれますので予めご了承ください。
ポスト・パフォーマンス・トーク 出演者
・9月30日(土)14:00
出演:ウィチャヤ・アータマート、パティポン・アサワマハポン(共同脚本)、DuckUnit(セノグラフィー、テクニカルディレクション)、福冨渉(日本語字幕翻訳/タイ文学研究者、タイ語翻訳・通訳者)
モデレーター:KYOTO EXPERIMENT共同ディレクター
・10月1日(日)13:00←追加!
出演:ウィチャヤ・アータマート、塚原悠也(ドラマトゥルク/KYOTO EXPERIMENT共同ディレクター)、荒木優光(サウンドデザイン)
モデレーター:KYOTO EXPERIMENT共同ディレクター
ウィチャヤ・アータマート
Wichaya Artamat
バンコク
演出家・For What Theatre 共同設立メンバー。1985年、タイ、バンコク生まれ。パフォーマンスに長らく魅了され、タマサート大学映画専攻を卒業後、Bangkok Theatre Festival in 2008 のプロジェクトコーディネーターとして劇場で働き始める。2009年には New Theatre Society に加わり、舞台芸術に対するさまざまな実験的・革新的形式のアプローチで注目される演出家となった。「東南アジア現代演劇界の最も有望な作家の1人」として称賛を集めている。社会が特定の月日を通して歴史をどのように記憶するのか、またいかに忘れてしまうかを探究することに強い関心を持っている。2014年に For What Theatre を共同設立し、Sudvisai Club、Collective Thai Scripts のメンバーでもある。代表作『 父の歌 (5月の3日間)』がクンステン・フェスティバル・デザール 2019 でヨーロッパプレミア公演を迎えて以来、ヨーロッパ、アジア、その他の地域で広範なツアー活動や創作活動を続けている。
For What Theatre
For What Theatre は、それぞれが劇団に所属する3人の演劇人によるグループ。ウィチャヤ・アータマートはNew Theatre Society、ササピン・シリワーニットはB-Floor Theatre、Ben BusarakamwongはCrescent Moon Theatreに所属。パフォーマンスの創作実験のための遊び場である。彼らの作品は演劇、ドキュメンタリー演劇、人形劇、パフォーマンスアート、写真、映像、インスタレーションなどさまざまな形式をとってきた。For What Theatre では、問題を含み複雑なタイの社会や政治を多様な方法で扱いながら、演劇という概念そのもの——タイの文脈においては凝り固まった、動かし難い意味を持っているように思われる言葉——を問い直そうとしている。
コンセプト・演出:ウィチャヤ・アータマート
脚本:パティポン・アサワマハポン、ウィチャヤ・アータマート
アート&テクニカルディレクション:ポーンパン・アーラヤウィラシッド、
ルアングリット・サンティスック
ドラマトゥルク:塚原悠也
サウンドデザイン・音響操作:荒木優光
マシーン製作:ラポンパット・ドゥワンプローイ
テクニカル・オペレーション:ピティ・ブンソム、モンティラー・ジェームスリ
オブジェクト・オペレーション:スラット・ゲオシークラーム
舞台監督:パティポン・アサワマハポン
英語字幕翻訳:カーリナー・チョーチラウィー、ソーイ・スクウォッド
制作:トンチャイ・ピマーパンシー
プロデューサー:ササピン・シリワーニット
協力:バンコク・アート&カルチャー・センター
レジデンス協力:京都芸術センター
共同製作:KYOTO EXPERIMENT、独立行政法人国際交流基金、
For What Theatre
助成:公益財団法人セゾン文化財団(国際プロジェクト支援「KYOTO
EXPERIMENT × For What Theatre Juggle & Hide[Seven
Whatchamacallits in Search of a Director])
共催:独立行政法人国際交流基金
主催:KYOTO EXPERIMENT
本作は令和5年度国際交流基金舞台芸術国際共同制作事業として制作
されました。
KYOTO EXPERIMENTスタッフ
テクニカルコーディネーター:小林勇陽
照明:葭田野浩介(RYU)
音響:吉田涼
映像:福岡 想
日本語字幕翻訳:福冨渉
トーク通訳:ポンサピタックサンティ・ピヤ、辻井美穂
制作:瀬藤朋(京都芸術センター)
短期インターン:有田麻梨奈、工藤美咲、前田遥音