展示
ムラティ・スルヨダルモ
TIDAK APA-APA
記憶、感情、文化、歴史、政治
いつもどこでも、身体からはじまる
長時間にわたる集中的な反復行為によって、身体と社会の関係における現在を生々しく浮かび上がらせるムラティ・スルヨダルモ。身体は記憶と感情の容れ物であると語るスルヨダルモの作品は、ルーツであるインドネシアで受けた教育、アーティストとしてのキャリアをスタートさせ20年を過ごしたドイツでの生活など、常に自身の経験に立脚している。ユニークかつ切実なこのパフォーマンスアーティストの実践を、今回は上演と展示の両面から紹介する。
インドネシア語で“It doesn’t matter. It’s OK. Don’t worry.” という意味がつく展示「TIDAK APA-APA」では、2つの映像作品を紹介。タイトなワンピースとハイヒールという出で立ちのスルヨダルモがお立ち台のように設えられたバターの塊の上で踊る代表作『Exergie – butter dance』は、2000年の発表以降、さまざまな場所で上演されてきた。溶けていくバターに足をとられ、ダンスは中断と再開を繰り返す。今回の展示では、時期の異なるパフォーマンスの記録映像がひとつのインスタレーションとして構成される。
ラテン語で「恐怖」を意味する『Timoribus』。1960年代から70年代にかけてのパフォーマンスアートの実践を参照しながら制作されたこのビデオインスタレーションでは、若者たちが暴力を演じるいくつかのシークエンスが重なり、反響していく。ソーシャルメディアのタイムラインを大量のコンテンツが流れ去っていく今、わたしたちは映像に向けていったいどんな欲望を投げかけているのだろうか?
10.5 (土) -10.27 (日) 10:00-20:00
☞ ムラティ・スルヨダルモ アーティストトーク
日程: 10.6 (日) 20:00
会場: ミーティングポイント BnA Alter Museum
料金:1,000円(1ドリンク付き)
言語:英語(日本語通訳あり)
予約: フォームより申込
ムラティ・スルヨダルモ
Melati Suryodarmo
スラカルタ(インドネシア)
1969年生まれ。インドネシア出身のパフォーマンスアーティスト。舞踏家・振付家の古川あんずに薫陶を受けたほか、ブラウンシュヴァイク美術大学ではパフォーマンスアーティストのマリーナ・アブラモヴィッチのもとで学ぶ。スルヨダルモの作品は、身体とその身体が属し住まう文化や環境との関係性、また、時間やアイデンティティ、政治などのテーマを扱う。ヘルシンキ現代美術館(フィンランド、2007)、HKWベルリン(2009)、シンガポール・ビエンナーレ(2016)、マカン美術館(ジャカルタ、インドネシア、2020-21年)、ボンネファンテン美術館(マーストリヒト、2022)、アイコン・ギャラリー(バーミンガム、2023)などの国際的なフェスティバルや展覧会で作品を発表。また、インドネシア、ソロにて毎年開催されるパフォーマンスアートのイベント Performance Art Laboratory Projectを主催するほか、2021年には同市内にアートスペース Studio Plesungan を設立。ジャカルタ・ビエンナーレ 2017でアーティスティック・ディレクター、2022年から現在までIndonesia Bertutur Festivalでアーティスティックディレクターを務める。
『Exergie – butter dance』(2000)
アーティスト:ムラティ・スルヨダルモ
『Timoribus』(2018)
アーティスト:ムラティ・スルヨダルモ
主催:KYOTO EXPERIMENT