Interview

KYOTO EXPERIMENT 事務局インターンシップ
修了生へのインタビュー[後編]

後藤孝典さん(2018年度インターン) 後藤孝典さん(2018年度インターン)

KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭では、開催初年度の2010年から10年にわたり、インターンシップを実施してきました。これまで研修を受けたのは当時19歳から31歳の31名。現在もその多くが様々な形で、文化芸術やその普及教育活動などに関わっています。
今回、インターン修了後も主に京都を拠点として文化芸術に関わる3名の方に、KYOTO EXPERIMENT 事務局インターンについて語ってもらいました。

前編はこちらから
注:文章内(*)は注釈。注釈は末尾に掲載しております。
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実施日 2020年5月8日(金)(コロナ禍による自粛期間中によりオンライン実施)
インタービュー参加者
河本あずみさん(2010年度インターン)
村上花織さん(2016年度秋インターン)
後藤孝典さん(2018年度インターン)
インタビュアー 井上美葉子(KYOTO EXPERIMENTインターンシップ担当)
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井上 さて、3人にお聞きしたいのですが、「インターン研修にこれがあれば良いのにな」と思ったことをアイディアとしていただけるでしょうか。ここ数年、インターンに修了アンケートを実施しているんですけど、アンケート結果には「フィードバックがほしい」というのが多いです。言い方を変えると「やりっぱなしだった」ってことですよね。自分がやったことに対して、評価や感想をKYOTO EXPERIMENT(以下KEXと表記)事務所側からもらう機会がなかったっていう意味なのかなって捉えたんですけど、それはどう思われますか。

河本 私のときは1年目だったので、当時は修了アンケートはなかったです。学生時代の時間を使ってインターンをしたわけだから、私がいたことによって、何かプラスに働いた部分があったのかとか、逆にもっとこういうところを期待してたりとか、そういうフィードバックがもらえてたらやっぱり良かったかなっていうのは、確かに思います。

後藤 自分を評価していただくことより、京都の演劇についての情報を得るという意味で、定期的に振り返りの時間を設けてもらったのは、役立ったかも知れないですね。確かに、自分がちゃんと働けているのかっていう不安もありました。事務局スタッフはすごく丁寧な方ばかりで、だいたい「ありがとうございます」とか「大丈夫です」とか言っていただくんですけど、僕はひねくれているので「みんな京都人やから、ほんまなんかなー」とずっと思っていた。実際、どんな評価、例えば通知表みたいな形で出す方式がいいのかはわからないけれど「自分はどう思われてるんだろうな」っていうのを感じていました。

村上 私の時は、こまめに事務局スタッフから教えていただいて「これはこうだったね」っていうのをその都度、言っていただいていたので、フィードバックがなかったなという実感はそんなになかったです。同期のインターンメンバーがそれぞれ全然違う形で現場に入っていて、その4人と事務局スタッフとで、最後にそろって喋る機会がなかったなっていうのは思います。フェスティバルが終わるとさっと人が減って、後作業をバラバラにやっていた。公演制作の方を含めたフェスティバル全体としての振り返りはあったんですけど、事務局の中でのインターンの話を交えてっていうのはなかったので、インターンのメンバーに声をかけて自分たちでできたらよかったかな。どういうふうに現場を見てたかとか、事務局はこうだった、劇場はこうだったとか、何かしらの共有の機会があったらよかったのかな。何かを得るのは自分で、その後考えるのも自分で、それがある意味フィードバックになっていくんですけど、もしかしたら自分とは違う視点があったのかなって思います。


村上花織さん(2016年度秋インターン)

 

井上 確かにインターン全員での振り返りはやってないですし、もちろん評価の時間もない。評価をしていいのか、して欲しいのかっていうことも含めて微妙なんですけど、やっぱり何かしらの納得がいく終わり方っていうのは必要なんだろうって思いました。

河本 私は、ロームシアター京都で働き始めてから制作側でも関わらせてもらったので、いろんな気持ちがあるんですが、インターンの立場からすると、実際に現場を回している人たちの声や姿を見ることが勉強になったので、制作とインターンが話せる場があったらいいなと思います。劇場制作の立場からすると、事務局インターンと接する機会があまりなかったので、その年のインターンのために時間をとって、各劇場の特徴やお客さんの迎え方、劇場の成り立ちや京都という場において劇場がどういう働きをしているかを知る機会があったらいいかなと思いました。

井上 実は、2018年から劇場見学を行うようになりました。その年のKEX作品を担当する制作の方に、その劇場が京都においてどんな役割があるか、どうやって今の仕事に就いたのかなどレクチャーもして頂いています。後藤さんは実際に受けてみてどうでしたか。

後藤 同じ地域にある複数の劇場を自分で目で見て比較するのは、フェスティバルじゃないとできないことなので、とてもありがたかったです。どんなキャリアで今ここで仕事をしているかを制作の方から聞く機会もあって、自分がこれから仕事を選んでいくにあたり、どんなやり方があるか実際の例を聞いたことは貴重な経験だったと思っています。

井上 KEX実行委員会の実行委員であり、毎年、公演会場にもなる京都芸術センター、ロームシアター京都、春秋座はそれぞれ全然タイプの違う施設なので、見学に同行する私も話を聞いてて面白いなと思っていました。もう一つ質問があります。開催が近づくにつれ、事務局スタッフが日増しに忙しくなっていく姿をインターンは一体どう思っていたのか、聞いてみたいです。

村上 正直、心配になりました。事務局スタッフのタイムカード記録作業をしたんですが、記録されている時間にびっくりするというか。開催直前の時期にはスタッフのみなさんが走り回っていて、なんかもっと私ができることがないのか、知識も技術もない自分がもどかしいなみたいな気持ち。

井上 この業界特有の時間の使い方ですね。普通には理解できないですよね。特に学生の方は。

後藤 みなさんが公演直前ですごく忙しいときも、意外とインターンの手が空いているタイミングがありました。開幕初日に一人のスタッフの方が話しかけても上の空で、、、そういうのを見て、もっと使い倒してくれてもよかったのにな、と思いました。実際、自分ができる仕事があるかは分からないですが。

村上 私も、もっと仕事をもらってもいいなと思っていました。

井上 河本さんはどうでしたか。多分、すごくやってたと思うんですけど。

河本 私のときには事務局常勤スタッフって1~2人しかいなかったんですよ。だから多くの仕事がその方に集約されていました。私は就職活動を考えていた時期で、現場が楽しかったので就職先の候補の一つに舞台業界を入れたいなと思っていました。舞台芸術の業界を知らなかったのも大きいんですけど、本番が近づくにつれスタッフが事務局にいる時間が長くなっていく様子を見ていると、「めちゃめちゃブラックだな、どうしよう」とは思いましたね。いざ制作側でやってみると、インターンの能力不足というのは一切なくて、そのタイミングで任せられる仕事とどうしても自分でやらないといけない仕事が分かれていくし、かつスピード勝負なので、なかなか難しいんですよね。確かにインターンをやっていたときは、私も本番前は意外と手持ち無沙汰で、やることがない時間もありました。

井上 実は私も、直前期にインターンの手が結構空いてるなっていうのをうすうす感じてはいたんです。とはいえ、やっぱり頼めることと頼めないことがあって。でも、後藤さんに最後の振り返りの時に「もっと仕事を頼んでもらっても大丈夫でした」って言われ、「そうなんだ!」って思ったんです。他者からの気づきという点でもインターンの存在って、KEXにとって必要なものなんです。必要だと思われるかどうか不安だっていう話も出ていましたが、その不安をなくすための具体的な方法って何か思い付きますか。

村上 何か一つ任されるのは、大きいと思います。私の場合、ウェルカムキット(*¹¹ )制作が担当で、その年に自分が手がけたものがアーティストの手に渡ったという目に見える成果がありました。何か一つ担当があったら、達成感もありますし。そこからいろいろ広がりもあるんじゃないかって。

井上 達成感。確かに。

後藤 任せられている仕事、自分の仕事っていうのがあると、ここは常に気にしていくところだという感覚を持てるので、安心感がある。やるからにはちゃんと成果を上げたい、自分の力をフェスティバルの成果物に使いたいなと思う。ただ公演直前でスタッフみんながバタバタしている状況で、「これ、やらせてください」っていうのは仕事の全容がつかめていないと言い出せない。そういう意味でも任せてほしいというのはありました。

井上 人間の心情として、目に見える成果物は欲しいものですよね。河本さんは何か思い出すことありますか。

河本 やっぱり私は「あなたは本が好きでそこに関心があるから、ブックフェアを任せます」と言われたときに、すごい嬉しかったし、「あなたにはこういういいところがあるから、あなたにお願いしたいです」って、付け加えて言ってもらえたことが自分の自信にもなりました。

井上 それを言葉で伝えるのが大事なことなんですかね。

河本 私が制作としてKEXに参加した時に、短期インターンが現場についたんですが、過去にインターンをしていた私から見ると、今参加してくれるインターンやボランティアは、みんなめちゃめちゃ能力が高いです。イラストレーターなんかもみんな使えるし。だからなんですけど、お願いする立場から見て、みんな自分の持ってる能力にあんまり自信がないんだなって思うことがあります。こっちが期待した以上のデザインを出してくれて「すごいね」と言っても「いやいや」と返したりして。やっぱり、その人のいいところや成果物について、ちゃんとわかりやすく言葉で「いい」ってことを言った方がいいんだなと思いながらやっていたので、それはそう言えるかもしれないですね。

井上 ありがとうございます。今後もKEX事務局はインターンシップ事業を継続していきますが、KEXのインターンにとって大事なものについて教えてください。メンタル的な部分でもいいですし、スキル的な部分でもいいですし。

後藤 自分に足りなかったという意味では、「やらせてください」と言える積極性があってもよかったなと思いました。

井上 積極性。自分から言い出すっていうことみたいな。

後藤 先ほどのように、任せてもらって嬉しかったというのもありますが、それを自分から提案ができれば自分にとっても事務局にとってもよかったかなというのがあります。参加するインターンにどんな経験があるかによるのかも知れないけど、それでも自分で勉強したいという気持ちがないとやっぱりダメなのかな、と自分の反省も踏まえて思います。

井上 自分から勉強したいっていう気持ちとか、自ら発信するということでしょうか。村上さんは何かありますか。

村上 とりあえず、ビビらないっていうことでしょうか。いろんな場面で気後れしないというか。お客さんに対してもスタッフに対しても、何かをするときに気後れせずにやったら、自分が思っていた以上に皆さん快く接してくれました。もうちょっと勇気をもって、どんどん突っ込んでいったら良かったというのがありますね。あんまり英語が達者ではないのですが、海外の方と喋るときにもビビらずにいったら良かったのかな。たまたま偉い人と話す機会があっても引かないとか。少人数でいろんなことを運営している中で、より多くの人と接する機会があったので、そこでビビらず前に出られたら良かったなって。

井上  「私、できないから」じゃなくて、目の前にきたチャンスを生かす。

村上 はい、チャンスというかタイミングというか。

井上 芸術祭に関わっている人はいっぱいいますから、その機会は使った方がいい。河本さんは、いろんな立場を知っていると思うんですが、いかがでしょうか。

河本 難しい。どんな人でもいいと思うんです。ただ、知らない時にちゃんと「わからないから教えてください」っていうのはすごい大事だなって思った出来事がありました。インターンのときに「知らない」って言えないまま勝手に進めちゃって、早い段階で制作の方が気づいてちゃんと注意してくれたということは今でも憶えています。何でも楽しむ気持ちがあればインターンはやっていけると思うんですけど、インターンとして仕事に関わるっていう意味では「ちょっと、わからないです」と勇気を持っていうことですかね。

井上 「わからない」って言うのは勇気がいることですよね。

河本 KEXは事務局インターン、短期インターン、ボランティアのしくみがあって、その中でも事務局インターンは深く仕事に関われます。一応、選抜があり、自分の能力とかを認めてもらった上で参加しているというのがあったので、当時の私は「失敗しちゃダメだ」と考えていました。なので、なかなか「わからない」って言う勇気がなかったんですが、そのときに「ちゃんと言わなくちゃいけないんだ」と思えたことは、今の仕事に活かされてます。そういう気持ちを持った人に来てほしいっていうよりは、コミュニケーションの一つとして大事かなと思います。あとは楽しむ気持ちがあればプラスにはなると思います。


ロームシアター京都 撮影:小川重雄

 
井上 3人のお話を聞いて「受けの姿勢よりも自分から出てくるものを生かす」というようなことを感じました。「インターンだから。教えてもらう側だから」って、どうしても受身になりがちな方向に、事務局側でも持っていくところがあったりします。「まずはやってみなさい」って背中を押す方も大事。ちゃんと考えておかないといけないんだなって思いました。皆さんのお話を聞いて、ああ、そういうふうに考えてたんだなっていうことがすごく伝わって来て、これからのインターン研修にぜひ生かしていきたいなって思います。

井上 最後に、何か言い足りないこと、言い忘れていたことがあればお願いします。

村上 良かったなという点で言うと、ある意味、KEXの現場で身についたこともあります。会期直前や公演日の忙しい中で、できなかったことができるようになったという経験。やらざるを得ない環境にあったのが良かったなと。武者修行のようになってしまうかもしれないんですけど、そういう場になっててもいいのかなって思います。

井上 できることをやるよりも、できないことをやれるようになった方がより嬉しいですね。すごく参考になります。ありがとうございます。皆さん京都でこれからもお会いすることがあると思うので、これからもよろしくお願いいたします。

河本 皆さん、自粛が続いて暗いムードですけど、頑張りましょう。

後藤 春秋座も続々と公演が中止・延期になっていてすごく悲しいんですけど、頑張るしかないなと思っています。今、学生なので就職をしないとな。皆さんの話を聞いて、こんな状況だけど仕事をなんとかしたい、改めて取り組まないとと思いました。

河本 もし、ロームシアター京都で募集があればぜひ。

井上 これからもネットワーク作りに遠慮せずに、KEXを使ってください。それでは、皆さん、ありがとうございました。

 

現在、今年度の事務局インターンシップを募集しています。
詳細はこちらから
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(*11)開催期間中の京都滞在に必要な情報を掲載した資料一式。主にアーティスト、出演者に配布する。