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フロレンティナ・ホルツィンガーとの出会いについて|文・塚原悠也

2022.9.24

いよいよ10月1日よりKYOTO EXPERIMENT 2022が開幕!
オープニング演目のひとつ、『TANZ(タンツ)』を日本初演するフロレンティナ・ホルツィンガーとの出会いについて、KYOTO EXPERIMENT共同ディレクターの塚原悠也が紹介しています。2010年代ヨーロッパの舞台芸術シーンの貴重なエピソードとあわせてお楽しみください!
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今回、初来日しヨーロッパで超話題の作品『TANZ(タンツ)』を上演するフロレンティナ・ホルツィンガーと知り合ったのは2016年のハンブルクだった。自分が活動を展開しているコンタクトゴンゾが参加した巨大なプロジェクトを通してだ。
フランクフルト・ムゾントゥルム劇場のアンナ・ヴァグナーとハンブルクのフェスに関わっていたエイカ・ウィットロックに誘われて彼らが立ち上げた「The Greatest Show on Earth」という企画にヨーロッパとアジア圏から14組ものアーティストが集結した。コンテンポラリーダンスという立ち位置から現代のサーカスについて考え、それをドラマツルグの軸として置きオムニバス的な2時間越えの大舞台を作ろうという、かなり大掛かりな企画だった。ツアーはハンブルグ、フランクフルト、ベルリン、パリ、ミュンヘンと3か月もツアーが組まれた。
その3か月の合間にゴンゾチームはレイキャビクで10日ほどの滞在制作からの発表(ガーって作った割に好評で翌年はブリストルへ呼ばれた)、ツアーの最後には塚原、松見はチョイ・カファイ作品に出演するためにロンドンのサドラーズ・ウェルズに行くなどもうめちゃくちゃだった。

はじめ声がかかり参加アーティストのラインナップを見ると、フィリップ・ケーヌがセノグラフィーを手掛けていたり、メグ・スチュアートが入っていたりしながら話題の若手などが勢ぞろいという風に聞いていた。フロレンティナはそのうちの一組で、宙に浮いたフラフープでエアリアル的なことをやりながらどうも超性的な演出でいい感じに物議をかもしているという触れ込みだった。

ゴンゾは中間アヤカさんにも参加してもらい4人でツアー。中間さんは確か1回だけ大阪の事務所で体を動かして、あとは公演中に覚えてもらおうとそのままヨーロッパへ行ったような気がする。ちなみにこの際、事務所で中間さんとのリハで体で木材をはさんで動いたりすることを試したのだが(いきなりおっさん3人が小柄な彼女と押し合い始めるのを躊躇したため)、それが今でもやってるゴンゾの一つの演目へ発展した。

初演の地、ハンブルクへ着くと他のアーティストも集まる中、それぞれ親交を深めながら自分たちの演目を試したり見せ合ったりする事が始まった。ゴンゾは、シンプルなぶつかり合いや接触を行う演目と、最後に木造カタパルトで自分たちに果物などを打ち合う演目の2か所の出番があった。初めてゴンゾの動きをスタッフに見せた際、フィリップ・ケーヌがとても喜んでくれたことを覚えている。回転床の機構が僕らのせいでぶっ壊れてしまってテクチームでかなり問題になったらしいけどフィリップが全部かばってくれたとあとで聞いた。(フィリップとはコロナ禍のKYOTO EXPERIMENT 2021 AUTUMNでリモートコラボを行い、僕らが彼のモグラ作品を行ったりと関係性が続いた)

フロレンティナは当時コンビを組んでいたヴィンセントと遅れて入って、割とぎりぎりのタイミングでリハを開始。バタバタと到着した日に演目を通したが途中でフロー(フロレンティナのこと)がちょっと今やっぱできないと中断したことをよく覚えている。理由はわからないけど、ちゃんとそういうこと言えてえらいなと思った。フローとヴィンセントの演目は基本的には宙に浮いたフラフープを使用したエアリアルだが、お互い上裸でゾンビメークをしていて、美しく宙で回りながらお互いを食べあうという演出で、いつも偽物の皮膚と血のりがぼたぼたと舞台に飛び散った。当時からやっぱり血が好きだったのかもしれない。

ハンブルグの初演は評判が全然よくなくって(笑)、しかめっ面の観客や頭脳派で知られる大学などが巨大で予算をいっぱい使う話題プロジェクトに対してやいのやいの言い出しているといううわさが聞こえてきた。ゴンゾとかほんとそういう頭いい系の要素はすべて捨てているので多少は責任を感じたが、まぁそれはもう仕方ないよねと自分たちがやるべきことに集中したがプロデュースチームは少し焦っていたように思う。

果物を打ち込む演目に対してもドイツでは食べ物で遊ぶことがとくにNGということで年配の観客はすごい顔をしてゴンゾを見ていた。それからゴンゾは上等だよという気持ちと、まぁそうだよねという気持ちの半々で床に落ちる果物や野菜をできるだけ食べまくるという野性味あふれる演目へと変化した。なんかビタミン補給もできてそうで一石二鳥ってなもんで。

でもハンブルクはAirbnbの持ち主のおばちゃんが毎日リビングにいて料理をしまくる僕のことが多分嫌いで寒いのに窓全開にしたり、レストランみたいなにおい(たぶん中華レストランって言いたかったんだろうけど)がすると言ってきたりかなりうざく、街ごと苦手意識を持ってしまったのでまた挽回しに行きたい。
そういえば子供向けワークショップを2日間してくれと言われてやったが、初日に来た子供たちが2日目1人しか来なくて中止にもなった。

なんせ3か月で23ステージもあるので同じことをやってても飽きるのでゴンゾの演目はどんどん変化していった。最終的にはエンディングの曲をアカペラで歌いだすなどもうなんかとても自由な気分で。

でもツアーが長すぎて松見君はシェンゲン協定の90日を超過してしまう!!という事に途中で気付き(塚原、三ヶ尻は途中一時帰国していたためセーフ)、待機期間をなぜか一人イスタンブールで過ごすというようなことまで起こった。笑

フローのこともよくわかってきて、どうもゴンゾも参加したことがあるイタリアのちょっと保守的な街のフェスに参加し、かれらの演目に対して地元の議員が新聞に抗議文を投書したことなどが話題になっていた。公演中ヴィンセントにディルドーが入っていたとかでコメントを求められた彼は「入っていたかはわからない。」という性器の大小の古典ネタに昇華する形で答えて余計に挑発しており、ヨーロッパのアーティストのガチパンクさを目の当たりにした。フローもこの態度のままその後、結局バカ売れすることになるのを端から見るのは楽しかった。

色々な街へ移動しては再集合などを繰り返して、オッケーまたやろうぜという風に集団のサーカスが始まる日々であった。ゴンゾの三ヶ尻君は各地のビールを買い込んでは劇場の冷蔵庫に入れていて終演後の楽しみにしていたが、それがよくなくなるらしく、途中から名前を書いてもなくなると楽屋でプリプリしていて、しかもヴィンセントとフローを疑っていた。もう僕はそういうのが悪いけど楽しくてしょうがなかった。

ヴィンセントは自分の演目は小さな檻に入れられたモンスターとして登場するのでゴンゾでそのかごを舞台上に運ぶ必要があって三ヶ尻君がどういう気持ちでこれ手伝っているのか想像して楽しんでいた。

すべての終演後に、出演者全員が集まるシーンがあるのだが、途中からなぜか僕とフローはハイタッチをするという演出なのかリアルなのかわからない動きが生まれて(なんかちょっと心配してたのかもしれない)不思議な連帯感が生まれた。2年目のツアーやアジアツアーという話も出始めていたがなかなか話はまとまらずこの作品は1年で終わったが、あり得ないくらいの個性が緩やかにしのぎを削りながらも仲間になっていくという美しいプロジェクトであった。

その後フローは自分のチームを新たに編成し『Apollon』という傑作を生みだす。時代を切り裂くバンドのファーストアルバムのような鋭さを持ったこの作品を新しいディレクターチームとなったKYOTO EXPERIMENTの初年度に紹介しようとしたがコロナで断念、その後彼女が自身のキャリアを決定づけたこの『TANZ』が満を持しての登場である。コロナや社会情勢でこれどうなっていくんだよっていう不穏な空気をショック療法で目を覚ましてくれる作品である。僕自身これを劇場で体験して自身の活動への刺激としたい。

そんなフローをやっと日本で紹介することができる。

塚原悠也 (KYOTO EXPERIMENT 共同ディレクター)

The Greatest Show on Earth 2016
Humans, animals, sensations! Join us in the arena of theatre magician Philippe Quesne! Experience the crème de la crème of the international performance avant-garde! 14 international artists risk everything in a circus show without a safety net and rise to the challenges faced by people in the 21st century! See Europe’s most radical choreographic couple Florentina Holzinger and Vincent Riebeek in a daring-baring trapeze act! Experience Meg Stuart and fashion designer Jean-Paul Lespagnard’s spectacular survival training for the future! Hold your breath when Valérie Castan and Antonia Baehr perform their dressage act of the self! Let Eisa Jocson’s performance of happiness perplex you!  Be there when the performance duo Hendrik Quast and Maika Knoblich test the relationship between humans and animals and Jeremy Wade incites a revolution with a clown’s entrée! Marvel at the reckless battle between artistic combo contact Gonzo and the death machine! And above it all: the neo-Dada 2-Mann-Thing-Orchesters Les Trucs as the circus band!

A Mousonturm Production * Age 16 and up * Choreography: Antonia Baehr & Valérie Castan, contact Gonzo, Eisa Jocson, Hendrik Quast & Maika Knoblich, Philippe Quesne, Vincent Riebeek & Florentina Holzinger, Meg Stuart, Jeremy Wade * Set: Philippe Quesne * Music: Les Trucs (Charlotte Simon, Zink Tonsur) * Idea, Dramaturgy: Anna Wagner, Eike Wittrock * Costumes: Caroline Creutzburg, Jean-Paul Lespagnard, Christina Neuss * Performance: contact Gonzo, Florentina Holzinger, Eisa Jocson, Márcio Kerber Canabarro, Maika Knoblich, Hendrik Quast, Vincent Riebeek, Emmilou Rößling, Vânia Rovisco, Karol Tymiński, Jeremy Wade and others * A production of Künstlerhaus Mousonturm and the International Summer festival Kampnagel, in coproduction with Théâtre Nanterre-Amandiers and Kammerspiele München * Sponsored by German Federal Cultural Foundation and the Rudolf Augstein Foundation * With support of the Adolf and Luisa Haeuser Foundation for Art and Culture in the frame of the project series UNLIMITED for the promotion of exemplary positions of contemporary Performing Arts.

 

 

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