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提携プログラム「Gathering in a better world – Visual Vernacular」アーティストインタビュー

2023.10.3

KAZUKI / 那須映里(左から)

KYOTO EXPERIMENTの提携プログラムの一つである「Gathering in a better world」。この企画は、ゲーテ・インスティトゥート大阪・京都とドイツ総領事館が、障害を持つアーティストと芸術活動を通して出会い、洞察を得て、一緒に創造することを目的としたものである。
今回、KYOTO EXPERIMENT共同ディレクターであるジュリエット・礼子・ナップが、「Gathering in a better world」参加アーティストである那須映里とKAZUKIの二人にオンラインでインタビューを行った。

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ナップ
まずは、ご活動について伺いたいと思います。お二人はそれぞれ、テレビ出演や通訳、その他イベント等、すごく幅広い活動をされてますよね。その中からビジュアル・ヴァナキュラー(VV)という手話を使ったパフォーマンスについて詳しく教えていただけますか?

那須さんの活動

那須
私の活動は、手話エンターテインメントを提供することが中心です。
その中に、VV(Visual Vernacular)というものがあります。これはデフアートと呼ばれるパフォーマンスのひとつで、見ることを中心とした視覚的な表現方法です。 聞こえても聞こえなくても、全世界の人が見て楽しめるものになっています。
手話ポエムというパフォーマンスがありますが、それと、このVVとはまた違う表現形式です。手話ポエムであれば、手話の単語や言葉を使うのですが、VVの場合は手話単語など言語としての恣意性が高いものは使わないです。
例えば、「雨」っていう手話はあるんですけれども、これは使いません。その代わり、こんな風に、指先を使って雨が降っている様子を表す、というような表現になります。

ナップ
那須さんは、パフォーマンスとしての手話を始めたきっかけはありますか?

那須
私が始めたのは、2021年2月頃だったと思います。世界ろう連盟青年部でオンラインのフェスティバルイベントがあったんですが、そのときに、VVに出てみないか、と私に連絡が来たんです。それが一番最初のきっかけだったと思います。

KAZUKI
僕も見ました。僕は、そのとき初めてVVというものを知ったんです。だから、那須さんを通してVVと出会ったということになりますね。すごく魅了されました。

ナップ
2021年と言うことは、そのイベントはコロナの影響でオンライン開催だったんでしょうか?

那須
そうです。

ナップ
私たち KYOTO EXPERIMENT のフェスティバルも、色々とコロナの影響を受けました。手話パフォーマンスの世界では、どんな影響があったと思いますか?

那須
ろう者の世界の中では、「コロナのおかげで」という意見は多いですね。
例えば、会社でZoomが一般的になったので、会議で字幕を使ったり、参加者の口の動きを見て話ができたとか。また、色々と国際的なオンラインイベントが立ち上がって、世界中のろう者との繋がりが増えました。オンラインの良い面も悪い面も経験しましたが、今コロナが収束しつつあるなかで、やっぱり、改めて対面の良さを感じています。

ナップ
私たちも結構そうですね。やっと対面が戻ってきて、やっぱり対面がいいなって、すごく思います。

KAZUKIさんの活動

KAZUKI
僕が手話パフォーマンスを始めたのは2017年です。その前はいわゆる普通の会社員だったんですよね。そこでは聞こえる方とのコミュニケーションがなかなか難しくて、本当に苦労しました。それで行き詰まっていた会社員6年目のころ、聞こえる人たちが帰宅していく様子をふと見ると、みんなイヤホンをしているんです。そのとき改めて、「あ、やっぱ聞こえる人っていうのは、音楽を聞いてるんだな」と思ったんです。もともと僕も音楽が好きでしたから、そこに手話を加えたらどうだろう、と思って。それがきっかけでしたね。
まずは、駅前でのストリートライブから始めました。人々が行き交うなかで、僕が手話歌を始める。すると、いろんな方が立ち止まって見てくれる。やがて、音楽関係者とかイベント関係の方の目にも止まって、お仕事に繋がって行ったんです。

ナップ
駅前でのパフォーマンスは、神戸拠点でしたよね。

KAZUKI
そうです。神戸駅から始まって、そこからイベントの舞台に立つことも増えていきました。そのうちにコロナ禍になって、イベントの仕事はゼロになったこともありますが、そのときはオンラインライブという形でやらせてもらいました。それが3年くらいですね。
実は、自分のろう者としてのアイデンティティがきちんと確立したのも、ちょうどその3年くらいでした。日本手話に改めて目覚め、色々磨きをかけていたなかで、VVや手話ポエムなどに魅了されて、自分の活動の幅も広がったなという気がします。

ナップ
先ほどKAZUKIさんが「日本手話」という風におっしゃいましたが、手話言語について少し伺いたいです。国によって手話が違うと聞いたんですが、 国際手話と日本手話の違いについて、教えていただけますか?

那須
国際手話は、実は言語ではないんです。エスペラントというのがありますよね。あれに近いもので、色々な国の手話を混ぜこぜにしながら作ったものです。一方で日本手話は、生活や文化から生まれてくる自然言語ですね。国際的な交流の場では、様々な手話が使われますが、なんとなくコミュニケーションしやすいものっていうのが決まってきます。イタリアの手話のこの言葉がいいな、アメリカの手話のここがいいな、というふうに。使いやすい手話を混ぜ合わせながら、ルールとして定めていった、その集合体が国際手話です。

キーワード「まぜまぜ」

ナップ
それはすごく面白いですね。実は、今年のKYOTO EXPERIMENTのキーワードが「まぜまぜ」なんです。お客さんが作品を観るときに、ちょっと鍵になるアイディアみたいなものとして、毎年キーワードを設定しているんですが、2年前のキーワードが「もしもし」で、去年は「てくてく」でした。そして、今年のキーワードが「まぜまぜ」なんです。

那須
あ、そうなんですね。
国際手話も「まぜまぜ」でできたものだから、一緒ですね。

ナップ
今年のフェスティバルで上演する作品には、何かしら、「まぜまぜ」にリンクしてるものがあると思っていて。言語とか文化って、ひとつのものに見えても、色々なものが混ざりあってでできていたりすると思うんです。例えば、英語の場合、フランス語やドイツ語が取り入れられていたり、歴史のなかで様々な変化を遂げていますよね。それじゃあいわゆるスタンダードとされるものは一体なんなのか、という問いも出てきます。

今回Showsの演目のひとつに、チェルフィッチュの『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』という演劇作品があります。これは、日本語ノン・ネイティブによって、日本語の演劇ができないか、という主題の演劇作品です。国が滅亡して、宇宙船の乗組員四人が出てくるという設定なんですが、演じるのはノン・ネイティブの俳優たち。正しい日本語とは何かとか、ある言語のスタンダードな姿って何なのか、ということを考えるきっかけになると思うんです。

手話パフォーマンスへのさまざまな反応

ナップ
パフォーマンスとしての手話の中には、VV、手話ポエム、手話歌などがあると伺いました。それらは日本手話より、ある意味自由な表現形式だと思いますが、ろう者の中から批判を受けたりすることはありますか?
私たちの話をすると、KYOTO EXPERIMENT では、例えばダンス作品でも結構変わった実験的なものを上演することがあります。すると、お客さんとしては「いや、それは本当にダンスなのか」って思われたりする。そもそもダンスとは何か、という問題になっていくと思うんですけど。その点で、手話パフォーマンスをやるなかで、批判を受けることはありますか?

那須
あー、なるほど。 VVと手話ポエムに対しては、ろう者からの批判はあんまりないですね。ダンスとか手話歌に関しては多い感じがします。

ナップ
手話歌に対して、ろう者からの批判が多いのは何故ですか?

KAZUKI
まず、やっぱり音楽って聞いたことがないろう者が多いわけですよね。様々な生い立ちや背景がありますから、これが正解というのはないんですけども。聞こえる学校で育ったろう者、音楽を知ってるろう者がいる一方、デフファミリー(ろう者だけの家族)や、音楽と接点の少ないろう者もいますから、「そもそも音楽って何?聞こえる人のものでしょ」みたいなのがあって。だから、手話を使ってわざわざ音楽をすること自体に抵抗がある人はいると思います。
音楽のリズムを取り入れるので、手話的じゃないという批判もあります。
さらに、作り手にも色々あります。手話を日本語に対応させただけの手話歌って多いんですが、日本語と手話は別の言語ですから、単に置き換えただけでは、結局何が言いたいのかろう者にはわからない、となりがちなんですよね。最近はTikTok なんかで聴者が作る手話歌がすごく流行っているんですが、ろう者とは切り離されたところで作られていている気がして、複雑な思いもあります。

那須
手話ダンスや手話歌が批判されるのは、多くの場合、ろう者が見てわからないからなんですよね。手話は自分たちの大事な言語なのに、ある種おもちゃみたいに扱って欲しくないという、迷惑に感じる気持ちっていうのがあると思うんです。
反対に、VVとか手話ポエムに批判が少ないというのは、手話の文法がそのまま壊されず尊重されているからだと思います。手話ダンスの場合、結局、振りが優先されたり、そのために手話の文法がないがしろにされたりする。歌も同じですね。

創作プロセスについて

ナップ
続いて、ご自身の創作プロセスについて教えてください。

那須
VVは、作るのにすごく時間がかかります。私の場合、まず自分の好きなリズムと、頭に浮かんだシーンを表現する。映像的にどうしていくかを考えて、絵コンテみたいに繋げていくんです。

ナップ
それは何分ぐらいのパフォーマンスになるんですか?

那須
VVは、長くても5分というところです。世界的にも同じで、やっぱり2分〜5分くらいですね。

ナップ
なるほど。その一作品を作るためにどれくらいの時間がかかるんでしょうか。

那須
1ヶ月くらいかかりますね。何度もアイディアを出したり捨てたりしながら、シーンとして繋がるものをいろんな角度から考えます。流れを考えて、間を作ったり、スピードを調整したり。そういったことを丁寧に丁寧に重ねて、やっとひとつの作品の発表に漕ぎ着ける。本当に時間がかかるプロセスです。

ナップ
那須さんのInstagramでもののけ姫も見ました。面白かったです。

那須
そうでしたか。でもあの作品は一ヶ月かかっていないんですよ、実は。即興で作りました。

KAZUKI
僕の場合は映像から作ることが多いですね。まずPVやMVを見てイメージを膨らませて、そこから自然に表現が出てくるものを探します。そうやって自分に合うものを選んだら、歌詞を深く読み込んでいきます。これを手話で表現していくわけですが、全体が流れるように作っていくには、ひとつの歌で大体3か月以上かかりますね。もうひとつ、時間がかかる理由があって、僕は音楽を使うので、そのリズムを自分の体で覚えなければいけないんです。カウントが体に染み込んだ状態になって初めて、手話とどのリズムを合わせるのかという調整に進むことができます。

ナップ
すごく複雑なレイヤーで丁寧に作り上げているんですね。パフォーマンスを作るのに想像以上の長い時間がかかると分かって興味深いです。

消滅危機言語と手話

ナップ
もう少し手話言語のお話を伺いたいです。世界的に話者の数が少なくなり、消滅の危機に瀕している言語がありますが、手話言語の場合はどうでしょうか?

那須
消滅危機言語リストというものがあって、それは手話言語も含めて書かれているんです。他の国の手話言語だと、そこに登録されているものもありますが、日本手話は多分今のところ載っていません。それでも、他の国に比べればまし、というだけで、今後は危なくなると思います。他国の様子を見ていると、これからの流れは想像できるからです。
今はろうの赤ちゃんが生まれると多くの場合、人工内耳の手術をします。親は手話がわからないから音の訓練を優先することが多いんです。お医者さんからも、手話を使うと、人工内耳の効果があまり表れず発声も下手になってしまうから手話はやらず、訓練に集中しましょうとか、人工内耳には大きな効果があるから手話は要りません、というような説明を受ける方もいらっしゃるんですよね。そういった流れで、自然な手話を話す人が減ってきているという状況です。
これからは世界中で、このような状況が起こると思います。手話言語を守るためには、ろうの子どもたちや、ろうの赤ちゃんを持つ親御さんに手話を知ってもらうことが第一の活動になっていくのかなと思っています。

ナップ
那須さんはそのような活動にも取り組んでいるんですか?

那須
「しゅわえもん」という活動をしています。子どものろう者がロールモデルを持って自分の将来を描けるように、大人のろう者と交流できる環境を作る活動です。私だけではなく、大阪では「こめっこ」という団体もありますし、乳幼児向けの「明晴プレスクール めだか」の活動もあります。

「Gathering in a better world」

ナップ
今年10月の「Gathering in a better world」ではどんなことをするか、少しお話しいただけますか?

KAZUKI
僕は、手話パフォーマンスをします。その後に、手話の意味や映像的な作り方などについて、レクチャーとワークショップを予定しています。ワークショップでは、参加者と一緒に手話ポエムのフレーズを作ってみたいと思います。

那須
目で見てわかる表現を一緒に作って体験したあとは、振り返りとして感想をシェアしながら、改めて、聞こえない人、聞こえる人、難聴の人、色々な人が集まって、交流ができたらなと思います。

今後の活動の展望

ナップ
最後の質問です。お二人の今後の活動の展望について教えてください。

KAZUKI
僕としては、若いろう者や子どもたちのロールモデルとして夢を与えるというか、ろう者がダンサーやパフォーマーになるための道作りみたいなことをしたいと思っています。僕の場合、聞こえる学校育ちで、途中から日本手話に目覚めたという経緯があって、苦しかった経験もあります。今後の若い世代には、いろんな世界があるということを見てもらって、新しい挑戦をしてほしい。その道づくりというのをしていきたいです。

那須
私の大きな目標は、ろう者、そして手話の立場を確立することですね。先ほど言ったように、もうこの先消えてしまうものとしてではなく、いろんな展開の仕方があると思うんですよね。手話を残すだけが目的ではないと思いますが、ろう者をろう者でいい、という考え方を、もっと広めていかなければいけないと思うんです、私の活動の場合。
今回のようにインタビューを受けることもそうですが、ろう者として外部との繋がりを作っていって、手話やろう者のイメージをもっと変えていきたいという思いがあります。

ナップ
ありがとうございます。
私の知らないことがたくさんあって、とても勉強になりました。また10月の 「Gathering in a better world」もぜひ観に行きたいと思っています!

那須・KAZUKI
ぜひ。対面でお会いできるのを楽しみにしています。

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プロフィール

那須映里
1995年生まれ、家族全員がろう者のデフファミリーとして育つ。日本大学法学部卒業。デンマークにあるFrontrunnersに留学し、ろう者のリーダーシップ、組織学について学ぶ。現在は手話エンターテイナー、役者、国際手話関係で活動する。2022年フジテレビドラマ『silent』に出演。NHK 「みんなの手話」、「手話で楽しむみんなのテレビ」に出演中。

KAZUKI
主に俳優業と手話パフォーマーとして活動中。手話歌、無音コンテンポラリー、舞踏、ろう者によるノンバーバルコミュニケーションなど様々な手法を用い、視覚的なパフォーマンスでろう者も聴者も誰もが観て楽しめる世界観を表現をしています。その他、映画・舞台俳優としても活動。『夏の音、夏の光』や『ヒゲの校長』『手話裁判劇テロ』など出演。2020TOKYOパラリンピック開会式出演。

ジュリエット・礼子・ナップ
KYOTO EXPERIMENT共同ディレクター。福岡生まれ。オックスフォード大学英語英文学科卒業。2015ー2017年Ryoji Ikeda Studio Kyotoでコミュニケーションマネージャー、音楽及びパフォーマンスのプロジェクトマネジャー。2017年よりKYOTO EXPERIMENTに広報として参加し、2020年より共同ディレクター。

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