magazine
【稽古場レポート】中間アヤカ&コレオグラフィ『フリーウェイ・ダンス』編
2021.3.16
KYOTO EXPERIMENT 2021 SPRINGで上演される舞台芸術作品の制作現場をレポートする本企画。最後にご紹介するのは中間アヤカ&コレオグラフィ『フリーウェイ・ダンス』です。
会場は庭へと姿を変え、4時間のダンスの間には「フリマの時間」なるものも!? 2019年の初演から2年を経て、本フェスティバルのために再創作される『フリーウェイ・ダンス』。その様子を一足先にご紹介します!<文・写真:山田航大(KYOTO EXPERIMENT インターン)>
稽古場の空間には衣装や小道具があり、そして準備をしているスタッフや中間さんがいます。この日は通し稽古で、本番を想定した準備が進められています。しかし、そこには一般的なリハーサルのように張り詰めた空気感はなく、和やかな雰囲気の中でダンスが始まりました。
その居心地の良さは舞台と客席が区切られていない舞台空間だからなのでしょうか。見ているスタッフたちは最初、何が起こるのか静かに見守っていましたが、だんだんと話し声が聞こえたり、観る場所を変えてみたりする人が現れます。端っこの方ではドリンクが提供されており、自由に取りに行くことができます。普通ではありえないような作品の鑑賞方法に少し不思議な気持ちになりました。一方で観客席に座ってじっと集中し続ける必要はなく、くつろぎながら鑑賞できるスタイルは、4時間の作品をじっくり楽しむためのアイデアだと思います。これから何が行われるのかワクワクします。
皆が自由に動き始めると、庭の中心で踊り、皆の視線を集めていた中間さんはいつのまにかいなくなり、空間に溶け込んでいます。鑑賞者は中間さんを見慣れ、踊っている中間さんと一緒にいることが自然の状態になっていきます。踊る中間さんだけが自由なのではなく、観る人も自由に行動することができます。別の言い方をすると、作品を提供するダンサーとそれを観る鑑賞者という力関係が崩れ去り、ダンサーも鑑賞者も平等にその場に存在することが可能になっています。
ダンサーと観客はただ同じ空間に別々に存在しているだけではありません。家族や友人といった自分以外の人から振付を提供してもらうという形で創作している中間さんは、興味の対象を観客にも向け始めます。
僕の近くに来て、新しい振付を始めました。腕をぶるぶると振っています。僕が与えた振付なのでしょうか、それとも僕から着想を得たものでしょうか。どちらにせよ、僕が今日ここにいなければ生まれなかった振付です。
ダンサーに僕から生まれた振付を踊ってもらうことは、作曲家に自分の曲を作ってもらう、または画家に似顔絵を描いてもらう、それと同じような喜びがあります。ダンサーである中間さんには新しい刺激を、僕は自分がアートに取り込まれる体験を、相互に与え合うことができた気がしました。
このように舞台と客席の境界を超えるだけでなく、そこにいる人と相互に影響を与え合いながら一緒に作品を創り上げることで、ダンス公演の空間は他人と少し仲良くなれる素敵で優しい世界になっていきます。そんな『フリーウェイ・ダンス』は、今までのダンスの当たり前や観客の当たり前を緩やかに、そして丁寧にほぐしていくような優しい作品だと感じました。
さて、2年の時を経て再創作される本作品では、庭師のハシグチヨウヘイさんが舞台美術を手掛けます。中間さんと庭、エキストラの出演者、そして観客が出会うとき、どんなことが起きるのか想像もつきませんが、きっと新鮮で刺激的な4時間になることでしょう!(入退場は自由です!)中間アヤカ&コレオグラフィ『フリーウェイ・ダンス』は京都芸術センターにて3/19(金)~21(日)に上演されます、ぜひ足をお運びくださいませ!
———————————————————————————————————————————
中間アヤカ&コレオグラフィ フリーウェイ・ダンス
日時:3.19(金) 15:00
3.20(土) 15:00
3.21(日) 15:00
上演時間 : 240 min(フリマの時間を含む。入退場自由)
会場:京都芸術センター 講堂
詳細はこちら