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【最終選考結果のお知らせ】批評プロジェクト 2021 AUTUMN
2021.12.21
KYOTO EXPERIMENT 2021 AUTUMNでは、対象演目のレビューを募集する批評プロジェクト 2021 AUTUMNを実施しました。
最終選考の結果、次年度のフェスティバルマガジンに掲載するレビューとして、美女丸氏による応募作を選出しました。このレビューは、日英両言語でフェスティバルマガジンに掲載します。
【最終選出作】
「恐怖と祈りを、孕む」
文:美女丸
【一次選考通過作】
「『生産』と『出産』の狭間で、温もりを見つける方法」
文:今井俊介
審査員コメント
美女丸氏の批評は、作品の細部の描写が丁寧かつ的確で、いわば「形」としての作品のたたずまいが、それだけでとてもよく分かります。批評に、厳密な意味での「客観的な描写」などはなく、「作品のなかの何をどのように描写するか」が、即、批評(行為)でもあるわけですが、美女丸氏のどちらかといえば硬質な文体による描写は、そのままこの作品に対する美女丸氏の「視点」にもなっています。また、そのように書けるということは、その都度消え去っていく舞台作品という他者に、真剣に向き合い、付き合ったことの証左でもあるでしょう。
その上で、美女丸氏は、この作品で最も問われていたのは、妊娠・出産にあたって、人が不可避的に恐怖と祈りを矛盾のなかで同時に体験せざるをえず、そのプロセスのなかで「個」が浮上するのだ、と論を進めています。こうした議論を展開していく上で、「本能」や「使命」(たとえば「子孫を残すべき本能」など)といった言葉遣いには、個人的にやや違和感も覚えるし、論のハコビに粗っぽさが残ってしまっていることもたしかなのですが、全体的な方向性としては、現代におけるアクチュアルな問題意識のなかで、この作品を捉えようとする姿勢が貫かれているし、一定の説得力を得ていると思います。
今井氏の批評は、この作品を、現代社会の諸相のさまざまな光のなかで、多角的に議論しようとする姿勢があって、読み応えがあるものに仕上がっています。たとえば、作品を見つつある観客自身がまさしく「擬娩」を体験しているのだ、といった評なども含めて、随所にはっとする指摘が含まれており、個人的には、ひとつひとつの指摘のどれかをもっと膨らませてもよいではないか、と感じるほど、批評としての可能性を感じました。最終選考では迷いました。文章全体に、やや書き慣れなさ、ぎこちなさが残ってしまっているのと、やはり論の展開の粗っぽさが見られますが、ぜひこれからも批評を書きつづけてほしいと思います。
(審査・メンター 森山直人)
批評プロジェクト 2021 AUTUMN
対象作品: 和田ながら×やんツー『擬娩』
※批評プロジェクト 2021 AUTUMNでは、一次選考を通過した2件のレビューをウェブマガジンに掲載しています。一次選考の結果と森山直人氏によるコメントはこちらからご覧ください。