読み物

アリス・リポル アーティストコメント

2026.10.5 (Mon)

Photo by Renato Mangolin

Photo by Renato Mangolin

2023年のKYOTO EXPERIMENTで京都の観客に鮮烈な印象を残したアリス・リポル/ Cia. RECが、3年ぶりに最新作『Adorno(装飾)』とともに再び京都へやってきます。
来週末10月17日~18日の上演に向けて、演出のアリス・リポルのコメントをお届けします。
共同アーティスティック・ディレクターの塚原悠也との思いがけないつながりや、『Lavagem(洗浄)』を日本で上演したときに感じたことなどが綴られています。
ぜひご覧ください!


私がまだ小さかった頃、地球という惑星に住んでいること、その地球は丸いこと、他にもいくつもの惑星があること、などを知りました。けれども、しばらくの間、自分たちは地球の内面、内側の面上に暮らしていると思っていました。星や雲や太陽は、いずれもその内側の中心にあると想像していました。このように考えていたときの感覚は、よく覚えています。このときすでに、他の国々があること、その中でも日本は最も遠い国だということを知っていました。ブラジルでは、日本は地球の反対側という言い方をするのです。

ある夜、姉と空を見上げていた私は、日本はどこにあるのか尋ねました。注意深く見れば、星の向こう側、地球の内面の反対側に日本が見えると思ったのです。二つ年上の姉は驚いたように私を見ました。そのとき、私は自分が地球の外側にいることを理解したのです。このときの会話はよく覚えていて、この発見とともに日本は私の中に刻まれました。

2012年、すでにダンスの仕事をしていた私は、自分が暮らすリオデジャネイロで、日本から来たcontact Gonzoの上演を観ました。私が演出するCia. RECの活動が始まった頃のことです。同時に私は、レナート・リニャーレスが演出する別の作品に出演していました。contact Gonzoに夢中だった私たちは、その作品の創作過程で、即興で互いに押し合ったり、たたき合ったりして同じような動きを真似ていました。その影響は作品の中に残り、そのシーンを私たちは内部で「Gonzo」と呼んでいました。

何年も経った後、私がCia. RECとともに『Lavagem(洗浄)』という作品をモントリオールで公演していたときに、作品を日本に招へいしたいと言ってくれたKYOTO EXPERIMENT 共同ディレクター(現KYOTO EXPERIMENT 共同アーティスティック・ディレクター)の川崎陽子さんに会いしました。申し出を喜んでいた私に、川崎さんは日本のダンスについて何か知っていますかと尋ねました。ほとんど知らないことを恥ずかしいと感じながら、私は唯一の(しかし強烈な)体験として、contact Gonzoのことを話しました。驚くべきことに、川崎さんはcontact Gonzoのメンバーである塚原悠也さんがKYOTO EXPERIMENTの共同ディレクターの1人だと言ったのです。塚原さんがあなたの作品を観るように私に勧めたのだ、と。信じられませんでした。contact Gonzoのメンバーが私の作品を知っていて、気に入ってくれていた!?私はさらに嬉しくなりました!

『Lavagem(洗浄)』を日本で上演し、自分の作品が私を遠くの地まで導いてくれたことに感動しました。私が子ども時代に思っていた地球の反対側まで、作品とともに行くなんて想像できませんでした。このことは、私たちの創作活動の普遍性に気づかせてくれました。多くの人は、私たちの上演をブラジルの政治問題と関連付けますが(それは正解です)、それは活動が探求することのひとつに過ぎません。他にも、個人間の問題、無意識、抽象的、絵画的、歴史的、医学的など様々なレイヤーがあり、どれも私にとって常に重要なものです。日本への旅は、このことを私に強く思い起こさせてくれました。

撮影:吉見崚

観客の集中した視線、鋭く、しかし敬意に満ちて思いやりのある静寂、私が時間を掛けて創作過程について語り、とても濃密な対話が起こった上演後のトーク、そのどれにも私は深く感動しました。地球の反対側でのことです。

数年後、私はForecastというベルリンでのメンタリング・プロジェクトに招かれました。とても興奮した私は、プロジェクトについて調べることなく、すぐに、参加しますと返事を送ってしまいました。数分後、ちょっと急ぎすぎたかなと思い直し、過去にどんな人たちがメンターを務めていたのか見てみると、塚原さんが直前の回に参加していました。私はすぐにメッセージを送り、参加してみてどうだったかを尋ねました。すると、とても楽しかったという返信があっただけでなく、塚原さんが私を推薦したことを教えてくれたのです!

その後、他のメンターの名前を聞いた私は、その中に日本人写真家の志賀理江子さんを見つけました。私はそのことを友人のレナトに伝えました。レナトは2012年に一緒に取り組んだ作品で演出を務めていて、その創作の過程で志賀さんの写真を持ってきたこと、写真が創作のためのリサーチの一部となっていたことを思い出させてくれました。このように私と志賀さんがいくつものレイヤーを経てつながっていたことを塚原さんに話すと、志賀さんもまた塚原さんがメンターに推薦していたこと、ふたりが友人であることを教えてくれました。つながりがどんどん広がっていきました!

京都に到着したときに感じたことも、私は決して忘れないでしょう。世界で最も大きな時差(12時間)にも関わらず、まだ頭がボーとした状態でしたが、ホテルの部屋に留まることはありませんでした。疲れていても、少しでも早く日本の土を踏みたく、私たちは通りに駆け出ました。私は目を閉じ、匂いを感じました。静寂。信号の点滅。色彩。街は透明で、繊細で、そして心地よい香りを漂わせていました。

『Lavagem(洗浄)』の小道具で使われる水が入ったバケツの赤色が、ただちに作品を京都に位置付けました。そこが、作品のあるべき場所でした。もしかすると、日本の作品、だったのかもしれません。

フェスティバルを離れた時のこともよく覚えています。非常に幸せな気持ちでしたが、戻って来るのは10年、15年後かもしれないという思いもありました。何といっても、地球の反対側ですから!けれども、ずっと早かったですね?3年が経ち、私たちは戻ってきます!
とても感動的です。

KYOTO EXPERIMENTでお会いしましょう。

アリス・リポル

閉じる