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【3件の劇評が選出されました!】批評プロジェクト 2021 SPRING

2021.5.19

KYOTO EXPERIMENT 2021 SPRING では、対象演目のレビューを募集する批評プロジェクト 2021 SPRINGを実施しました。

演劇批評家の森山直人氏による審査を経て、3件の批評文が選出されました。森山氏がメンターとなってアドバイスを行い、ブラッシュアップ期間を経て完成した3件の批評文を、本ウェブサイトのmagazineページにて発表します。
今回選出された3件の劇評からさらに1件を選出し、KYOTO EXPERIMENT 2021 AUTUMN のフェスティバルマガジンに掲載します。最終選考結果については、5月末に本ウェブサイトで発表いたします。

【選出批評文】

五十音順

瀧尻浩士 「日常空間の裂け目から聞こえる劇の声 ―父の歌から、母の歌あるいは自分たちの歌へ―」

吉水佑奈
「日常」を描く——『父の歌 (5月の3日間)』

よるのふね 「父、掘り返す、焼く」「灰を流すまで許さない」——「役」から降りてまなざすこと——

【審査、メンター】

森山直人(演劇批評家/京都芸術大学 舞台芸術研究センター所長補佐)

【対象作品】

ウィチャヤ・アータマート/For What Theatre 『父の歌(5月の3日間)』

オンライン配信
2021年3月24日 (水) – 3月28日 (月)

審査評

おそらく、今回の「課題作品」であるウィチャヤ・アータマート『父の歌 (5月の3日間)』の批評を書くことは、かなりハードルの高い作業ではなかったかと思います。
第一に、コロナ禍のせいで、リアルな上演ではなく「映像配信」という形態であったこと、第二に、この作品が現代タイにおけるきわめてデリケートな日常の機微を扱った作品であったこと。――前者については、いうまでもなく、劇場体験と、映像体験とでは、見え方が違ってくるという問題があります。ただ、本作の場合、後者のポイントはさらに重要です。この作品が前提としているタイの現代 (史) のコンテクストを、日本にいる大多数の観客は、 (もちろん私自身を含めて) 共有していないからです。
たしかに、「作品体験」は、「リサーチ体験」とは別種です。しかし、さすがにこの作品を理解する上では、背景となっているタイ現代史について、最低限の知識は不可欠でしょう。KYOTO EXPERIMENTのウェブサイトには、福冨渉さんによる詳しい記事が掲載されていました。応募作は、どれも、こうした「知識」に対してどのような距離感を取るべきか、難儀していたように思います。
ただ、「作品を見た後で調べる」という体験もまた、観劇体験の一部である、と考えて何が悪いのでしょう? なぜなら演劇は、瞬間的な体験であると同時に、持続的な体験でもあるからです (でなければそもそも「古典」など存在しえません)。警戒すべきなのは、「調べたことで安易に理解した気になる」ことだけです。「正確に理解する」ことなど、誰にもできません。むしろ「理解できないこと」に向けて、何かを理解しようと手を伸ばすこと――それぞれの手の伸ばし方にこそ、その人独自の批評行為が現れるのだと思います。
応募作は、総じてどれも力作で、選考は難航しました。最終選考に残った3本は、それぞれ違った文体や方法で、作品に接近しています (その手つきの違いを重視して選びました)。ぜひ読みくらべて、今後の参考にしていただければ幸いです。
(審査・メンター 森山直人)

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