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【批評プロジェクト 2022】最終選考結果のお知らせ
2022.12.27
KYOTO EXPERIMENT 2022では、対象演目のレビューを募集する批評プロジェクト 2022を実施しました。最終選考の結果、次年度のフェスティバルマガジンに掲載するレビューとして、田中淳士氏による応募作を選出しました。このレビューは、日英両言語でフェスティバルマガジンに掲載します。
【最終選出作】
「わたしは、あなたとは違うやり方で宙を舞う」
文:田中淳士
【一次選考通過作】
「眼差しの暴力と、身体の両義性」
文:上鹿渡大希
「反転する欲望を語る身体」
文:中村外
【審査員コメント】
最優秀作品に、田中淳士さんの作品を選びたいと思います。三作品は、どれも独自の視点を持ち、それにふさわしい記述・分析の言葉を備えていたという点で、甲乙つけがたいものでした。そのなかで、田中さんの作品がわずかに優れていた点は、所与の字数を最も効果的にバランスよく活用しながら、はじめての読者にもわかりやすく作品のイメージを伝えているところです。自身の論点を、簡潔で的確な用語法と文体で表現できるのは、批評を活性化する上で、やはり無視できない技術であるように思いました。同時にまた、田中さんの作品には、いくつかの「的確さを一歩踏み越えた解釈」の提示が見られます。たとえば「老教師と生徒たち」の関係性の描き方における「痛烈な批判性」といった論点については、そこまで読み取るべきかどうか、意見が分かれるところではあるでしょう。けれども、そういう論点を打ち出すことによって、生産的な議論を喚起する力は生じることになる。そうした機能も、批評にとっては大事な要素であるように思います。バイクの意味論についての分析などにも、独自の魅力がありました。
中村外さんの作品は、作品の本質を、丁寧に、的確な言葉で捉えており、読み返すごとに、魅力が増してくるような文章です。今後書く機会が増えれば増えるほど、一層持ち味が輝くようになるのではないでしょうか。同じことは、上鹿渡大希さんの作品にも言えます。「身体の所有(権)」という概念を通じて、この作品の多義性に寄り添おうとする態度は、批評にとって大切な要素を体現していたと思います。
(審査・メンター 森山直人)
批評プロジェクト 2022
対象作品:フロレンティナ・ホルツィンガー『TANZ(タンツ)』
※批評プロジェクト 2022では、一次選考を通過した3件のレビューをウェブマガジンに掲載しています。一次選考の結果と森山直人氏によるコメントはこちらからご覧ください。