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【最終選考結果】批評プロジェクト 2021 SPRING
2021.6.8
KYOTO EXPERIMENT 2021 SPRING では、対象演目のレビューを募集する批評プロジェクト 2021 SPRINGを実施しました。
最終選考の結果、KYOTO EXPERIMENT 2021 AUTUMN のフェスティバルマガジンに掲載する劇評として、よるのふね氏による応募作が選出されました。
この批評文は、日英両言語でフェスティバルマガジンに掲載されます。
【最終選出作】
よるのふね
「父、掘り返す、焼く」「灰を流すまで許さない」
——「役」から降りてまなざすこと——
劇評の全文はこちら
【一次選考通過作】
瀧尻浩士 「日常空間の裂け目から聞こえる劇の声 ―父の歌から、母の歌あるいは自分たちの歌へ―」
吉水佑奈
「日常」を描く——『父の歌 (5月の3日間)』
審査員コメント
よるのふね氏の批評は、「葬儀」(=「儀礼」)と「役」という視点から、この作品を分析しようとした作品です。この仕掛けを通じて、①国家・社会のイデオロギーと密着した「間延びした長い長い葬式」の終わりの可能性、②終わった後も、再び「役」を演じてしまう危険性、③その危険性を、「役を降りる」ことで相対化する「演劇」そのものの可能性、という、ウチャヤ・アータマートの本作品が孕んでいる三層構造を、きわめて明確に浮き彫りにすることに成功している点を高く評価し、本批評を最終選出作に選びたいと思います。
なお、瀧尻氏の批評は、劇中の「歌」に焦点を絞って分析しようとする非常に魅力的な試みでした。最後に出てくる「アジア的大地」といった比喩を用いなくても、この劇評は成立するのではないか、という気もしますし、政治的な3つの日付について、もう少し具体的な言及があってもよかったかもしれませんが、全体として、読み応えのある視点を提供している力作だと思います。
吉水氏の批評は、オーソドックスな批評の文体を通して、作品のデータにひとつひとつ基づきつつ、この作品のメタシアトリカルな構造を明確に指摘していた点がよかったと思います。欲を言えば、観客である日本人をも巻き込みうる「日常性」というものの構造について、もう一歩踏み込んだ分析があれば、さらによかったと思います。
批評プロジェクト 2021 SPRING
審査・メンター: 森山直人(演劇批評家)
対象作品: ウィチャヤ・アータマート/For What Theatre 『父の歌 (5月の3日間)』(オンライン配信)
※批評プロジェクト 2021 SPRINGでは、一次選考を通過した3件の劇評をウェブマガジンに掲載しています。一次選考の結果と森山直人氏によるコメントはこちらからご覧ください。